バンダイナムコグループのアニメ事業会社サンライズが、次世代のアニメーション制作スタッフ育成に向けた投資を積極化している。2020年4月21日、サンライズはアニメの美術スタッフを育成する「サンライズ美術塾」を2021年4月より開設することを明らかにした。
「サンライズ美術塾」は、アニメーション制作のうち美術背景と呼ばれる部分を描くスタッフの養成を目指す。受講生は半年間のプログラムを通じて美術の高いスキルを身につける。サンライズは、スタッフを育成を通じてアニメの品質向上を目指す。
美術塾の開設にあたりサンライズは、近年のアニメーション制作の現場での人材不足の深刻化を理由に挙げている。なかでも次代を担う若手の獲得が課題だとする。このままでは長年蓄積されてきたさまざまな技術が失われかねないと危機感を持つ。
若手スタッフの不足は、これまで制作現場の就業環境が厳しく、離職率が高いことも一因だ。そこで就職前にプロとして通用する技術を集中的に学ぶ機会を設けることで、定着率の向上も視野にいれていそうだ。就職前のインターシップと技術取得が組み合わされていると考えるとわかりやすい。
「サンライズ美術塾」では、まず半年間の実習期間を設ける。そこで塾生は美術スタッフとしての基礎スキルの取得をする。指導にあたっては、最前線で活躍するスタッフが講師を担当する。主任講師の河野次郎氏は『楽しいムーミン一家』『白鯨伝説』『メガロボクス』など幅広いジャンルで活躍している。
さらに塾の参加が、サンライズでの就職と結びついている。実習後は卒業試験を通過することを条件にサンライズ専属の美術スタッフとなるチャンスがある。
また塾の受講にあたっては、月額10万円(6ヵ月60万円)が受講生に支給される制度も導入している。受講生が生活費を心配することなく技術習得に集中する環境を維持するためである。
実習期間は2021年4月から9月までの半年間、毎週月曜から金曜日の10時から18時とほぼフルタイムとなる。実習場所は杉並区荻窪を予定している。
かなり魅力的な条件の「サンライズ美術塾」だが、募集人数は若干名とややハードルは高い。応募資格は2021年3月に高校を卒業見込み、あるいは高校卒業以上で18歳から25歳まで。
2020年7月10日までに書類提出し、書類選考、実技・面接試験が実施される。8月下旬に合格を決定する予定だ。
サンライズが就職を前提とした育成プロジェクトを実施するのは、「サンライズ美術塾」が初めてでない。すでにアニメーション制作の別パートである作画を支えるアニメーター養成のプログラム「作画塾」が、2005年から開設されている。
作画塾からは既に一線で活躍する多くの人材を輩出している。こうした成功をアニメーターだけでなく、美術スタッフに広げる。アニメ業界の慢性的な人手不足はメディアなどでも大きく取り上げられるが、アニメーターに焦点がちだ。しかし実際は、多くの分野で共通する問題となっている。なかでも美術背景の人材不足は深刻とされている。「サンライズ美術塾」設立の背景には、そうした業界事情がある。
サンライズ美術塾
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