広告付き無料プランも、NBCユニバーサルが配信サービス「PEACOCK」詳細発表

PEACOCK

 NetflixやAmazonプライムビデオの成功に刺激されて、ハリウッドの大手映画会社が続々と新しい映像プラットフォームビジネスに参入している。2019年秋にスタートしたディズニーの「Disney+」、すでにスタート時期を明らかにしているワーナー・メディアの「HBO max」が、一歩先を行く。
 さらなる有力プレイヤーとされていたNBCユニバーサルが、2020年1月16日に新映像プラットフォームの概要を明らかにした。サービス名はすでに発表されている「Peacock」、4月15日に現在コムキャストが配信する「Xfinity X1」と「Flex」で先行スタートし、7月15日に正式デビューする。
 NBCは7月24日から始まる東京オリンピックの米国テレビ放送権を独占するから、これを目玉にスタートダッシュを目指す。配信番組はこのほかオリジナル番組を含む映画600タイトル以上、テレビシリーズ400タイトル以上、ニュースやスポーツなども予定する。

 発表の中に、NBCの戦略が表れている。ひとつは、既存のCATVとのセット戦略である。サービス開始にあたって、Coxとコムキャストとセット販売することで当初より2400万世帯との契約を確保する。
 もうひとつはライブ番組である。オリンピックだけでなくニュースショーなど、得意とする既存のテレビ番組を配信する。例えばNetflixはライブ番組を配信しないから、ここで違いをだす。

 さらにPeacockの大きな特長は、いくつかの異なる料金体系を組んだことにある。定額課金見放題のほか、視聴無料で広告つきプログラムを用意している。
 「Peacock Free」は完全無料で、視聴可能な範囲が絞られるが広告付きで7500時間の番組と、テレビの見逃し配信にアクセス出来る。スポンサーには保険会社や大手量販店のターゲット、食品会社のユニリバーなどが予定されている。
 有料プラン「Peacock Premium」は、広告付きで月4.99ドルで見放題となる。さらにCoxとコムキャストのユーザーには、これまでと同じ料金でセットにてこれが提供される。また広告がない視聴は追加5ドル、月9.99ドルで可能になる。これはNetflixやDisney+と同じ仕組みだ。

 既存の事業者の相次ぐ参入で、米国の映像配信ビジネスは一挙に過当競争に突入しつつある。このなかで後発のNBCユニバーサルがどう差別化し、戦うのか注目されていた。
 それがグループの強みになっているテレビ番組放送とCATV局との連携だ。さらに広告をつけることで実現する低価格&フリー提供で差別化する。Peacock Premiumの契約世帯数は4年後の2024年に3千万から3500万と、すでに国内1億世帯に迫るNetflixやスタート2日間だけで1000万を獲得したDisney+に較べると控えめだ。狙いは無料視聴ユーザーなのかもしれない。
 Peacockの新たなビジネスモデルがどのように受け入れられるか、今後の米国の映像配信ビジネスの行方を左右することになりそうだ。

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