年明け1月からアニメーション関係者に気になるニュースが、中国新聞に掲載された。「広島国際アニメフェス、「芸術祭」への一新を検討 22年度、継続望む関係者も」とタイトルした記事で、広島市が2020年の開催を最後に、広島国際アニメーションフェスティバルの一新を検討中というものだ。
報道によれば、2022年度を目途に、これまでの短編アニメーション中心から映画やマンガ、メディアアートに対象を広げた芸術祭に衣替えすることを想定している。さらに音楽イベントを同時開催し、連携する構想もあるとする。主催や関係機関からの公式な発表はなく、どの程度具体化しているかは現時点では明らかでない。
広島国際アニメーションフェスティバルは1984年に設立され、2年に一度広島市で開催されてきた。2020年の開催で37年目、第18回を迎える。世界に数ある映画祭の中でも知名度が高く、世界4大アニメーション映画祭のひとつとして知られてきた。
2020年の第17回には世界88ヵ国・地域から2842作品の応募があり、5日間で約3万人を動員した。主催は広島国際アニメーションフェスティバル実行委員会と広島市、それに公益財団法人広島市文化財団。また国際アニメーションフィルム協会(ASIFA)や米国アカデミー賞とも連動する。
4大アニメーション映画祭のひとつとされる一方で、近年は世界のアニメーション界での存在感に翳りが見える。世界的に作品制作本数が増える中で、4大映画祭の他の3つが隔年開催から毎年開催に移行し、広島だけが隔年に留まっているためだ。
また長編コンペティションがないのも弱点だ。近年世界的に長編アニメーション映画の制作が増え、重要性も増している。主要なアニメーション映画祭のほとんどが長編コンペティション部門を設ける。このため広島は上映本数も他の映画祭に較べて少なく、ネックになりつつある。しかし毎年開催や部門の拡張は予算や人員も増やさなければ実現出来ない。
そこでより多くの市民に向けた総合芸術祭との案が浮上したとみられる。しかしそうなった場合の映画祭の位置づけはどうなるのか、これも含めて今後議論が起きそうだ。
一方で文化庁は令和2年度予算で、「国際映画祭支援事業」の拡充を概算要求している。このなかで東京国際映画祭だけでなく、新たに広島国際アニメーションフェスティバルの支援も掲げていた。文化庁の令和2年度予算案は最終的には前年並みとなったが、国際映画祭の拡大は目指しているのだろう。
実行委員会や広島市、国際アニメーションフィルム協会日本支部、それに文化庁も含めて、今後の映画祭のあり方が問われそうだ。
広島国際アニメフェス、「芸術祭」への一新を検討 22年度、継続望む関係者も(中国新聞)
https://www.chugoku-np.co.jp/local/news/article.php?comment_id=601544&comment_sub_id=0&category_id=256