CGオリジナルアニメ「OBSOLETE」12日間で580万再生、YouTube限定配信


 12月にYouTube限定配信を開始した新作オリジナルアニメ『OBSOLETE』が、快進撃のスタートを切った。本編は2019年12月3日に、まずYouTubeの「バンダイナムコアーツチャンネル」で配信を開始した。
 開始から高い関心を集め、短期間で100万、200万、500万と再生数の大台を次々に突破した。スタートから13日目にあたる12月16日現在では、YouTube公式サイトの再生回数は580万回超を表示している。無料で手軽に観られるとはいえ、YouTube上で全くオリジナルのアニメ作品が短期間で数百万単位の再生数を叩き出すのは異例だ。『OBSOLETE』が、高い注目を集めていることがわかる。
 再生回数が多いだけでなく、作品にポジティブな評価を加えたのが6.3万人とネガティブ評価の4700を大きく超える。コメント記入も3000以上と積極的な反応を受けている。

 『OBSOLETE』は、原作からアニメのために生みだされた完全オリジナル作品。異星人から提供された意識制御型汎用作業ロボット・エグゾフレームが一般化した地球を舞台に、中南米で起きた紛争に介入するアメリカ合衆国海兵隊から物語をスタートする。各話12分半~13分半、全6話で武器としてのエグゾフレームの魅力を描き出す。
『魔法少女まどか☆マギカ』や『PSYCHO-PASS サイコパス』などのヒット作でお馴染みの虚淵玄氏が原案・シリーズ構成を務めるのも話題だ。さらに新進ながらフルCGアニメで定評のある武右ェ門のアニメーション制作、監督には設定で著名な白土晴一氏も参加するなど実力派でスタッフを固めたのも人気の理由だろう。
 武右ェ門はサンライズから独立したベテランCGチームを中心に2014年に設立、数々の人気アニメのCGパートを制作してきた。2016年は手描きイラストレーションのタッチでCGアニメとした短編『風の又三郎』の製作が注目された。ジャンルは異なるが『OBSOLETE』でもこのイラストタッチのCGの技術が活かされている。

 また再生回数が伸びたのは、海外対応に力をいれたことも理由とみられる。世界同時配信でスタートし、当初から日本語音声のほか英語、スペイン語、ドイツ語、フランス語、ポルトガル語、ロシア語、韓国語の字幕をつけている。コメント欄も作品の舞台となったラテンアメリカなど、世界各国の言葉が中心となっている。

 気になるのは作品の収益だ。配信にあたっては広告が付加されているが、例え数百万回の再生があってもウェブ広告の収入ではアニメーション制作はほとんどカバー出来ないであろう。
 ひとつ考えられるのはプレミア視聴の収入だ。エピソード2以降は毎週火曜日20時(日本時間)に順次無料公開されているが、YouTubeのプレミア会員になれば当初より全6話が観ることが出来る。また番組に「YouTube Originals」を掲げており、YouTubeから広告収入とは異なる別の支払いの可能性がありそうだ。
 また作品は1話約13分と短いが、2話ずつでテレビアニメ30分枠1話にもなる。OVAでのパッケージ販売やテレビ放送など次の展開も考えられる。

 アニメの配信視聴が一般化するなかで、現在、配信オリジナルアニメの可能性に関心が集まっている。しかし配信オリジナルアニメと言えば、Netflixなどの定額課金のサブスクリプション型のサービスが注目される。
 今回の『OBSOLETE』は、無料配信とサブスクリプション型のプレミア会員を組み合わせた別のビジネスモデルを提案する。YouTubeは世界的な映像プラットフォームだけに、新たなビジネスモデルが成立するのか、『OBSOLETE』の成否はアニメビジネスの今後の行方も占う。

『OBSOLETE(オブソリート)』
https://project-obsolete.com/

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