スタジオポノックが仏・アヌシーで喝采 オリンピックを表現する短編アニメ製作も発表

アヌシー国際アニメーション映画祭

 2019年6月10日、アヌシー国際アニメーション映画祭で開催された『ちいさな英雄-カニとタマゴと透明人間-』の特別上映会は、今年のイベントの最も華やかなひとつだった。上映にあたって、本作を制作したスタジオポノックの西村義明プロデューサー、そしてオムニバス3篇の全監督、米林宏昌(「カニーニとカニーノ」)、百瀬義行(「サムライエッグ」) 、山下明彦(「透明人間」)がゲストとして揃ったからだ。
 もちろん映画祭のメインシアターを使った会場は超満員。ポノックが挑んだ映像表現を堪能した後は、4人によるトークもたっぷりと取られ、観客にとっても充実した上映会だった。

 西村プロデューサーは冒頭で、本作は当初は4作品で構成を予定していたこと、残りの1篇は2018年4月に逝去した高畑勲監督が担当する予定であったことを明かした。そして高畑監督が特に愛した映画祭であるアヌシーに本作を持って来れたことが幸せですと挨拶した。
 短編オムニバスというあまりないスタイルを取ったことについては、新しい挑戦にチャレンジするためだったと語った。前作『メアリーと魔女の花』は大ヒットしたが、「成功すればするほど周囲の期待は大きくなり、僕らは保守的になってしまう」と感じたのだという。『ちいさな英雄』では、世界の誰かひとりでも救われる人がいるアニメであればと考えた。3つの作品がそれぞれ大きな個性を持っている理由だ。

 米林宏昌監督が「カニーニとカニーノ」でこだわったのは、水の表現。3DCGの力を借りれば自身の描きたかった水の表現ができるのでないかと思ったのきっかけである。一方でキャラクターは手描きにし、3DCGを手描きに、手描きを3DCGに近づける。短編だから出来た挑戦だという。
 「サムライエッグ」の百瀬義行監督は、子ども目線から映像に挑んでいる。その結果として、背景をフォトリアリスティックにしない選択をした。背景とキャラクターに同一のマチエールを与えることを目指した。
 山下明彦監督は、通常はストーリーから表現が作らるが、逆に表現からストーリーを考えたという。ストーリーが面白いよりも、心情表現を伝えることを重視。その結果、顔がなくしゃべれらない透明人間を動きと音で表現する難題に「透明人間」で挑んだ。
 三人三様の新たなチャンレンジは、西村プロデューサーの当初の意図どおりと言っていいだろう。そうしたチャレンジ精神は、アニメーション映画祭の場にこそぴったりであった。

 スタジオポノックの挑戦は、今後も続く。その新たなチャンレンジの場は、オリンピックとなりそうだ。今回のトークの最後に、スタジオポノックが国際オリンピック委員会(IOC)とコレボレーションした短編アニメを作ることがサプライズで発表された。オリンピックの持つ希望と平和の願いを世界に伝える作品になる。スタジオポノック、そしてアニメが持つメッセージを伝える力が注目された。
 スタジオポノックが手がけるからには、単なるPR映像とは異なるアプローチになるだろう。スタジオ以外のスタッフ情報は今後の発表になりそうだが、完成を期待して待つには十分だろう。
 短編アニメは東京オリンピックが開催される2020年夏に世界公開される。また来年6月のアヌシー国際アニメーション映画祭で、先行公開も決定している。今年に続き2020年も、スタジオポノックが映画祭で大きな注目を集めそうだ。

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