日本アニメを巡るビジネスの再編が世界的に進んでいる。米国の大手日本アニメの流通・配給会社のファニメーション(Funimation)が、イギリスで日本アニメビジネスを手がけるマンガ・エンタテインメント(Manga Entertainment Limited)を買収した。2019年5月29日、ファニメーションが発表した。
マンガ・エンタテインメントはロンドンに本社を持ち、イギリスとアイルランドで日本アニメの配給・流通を長年手がけてきた。同じ英語圏をベースにしていることもあり、これまでもファニメーションと提携関係を結んできた。今回の買収によりファニメーションは同社のイギリス拠点とマンガ・エンタテインメントの経営統合を実現する。マンガ・エンタテインメントは、日本アニメでイギリスにて圧倒的な存在になる。
また経営統合により、マンガ・エンタテインメントがイギリスで配給権を持つタイトルが、数ヶ月以内に現地のファニメーションの映像プラットフォーム「FunimationNow」で配信を開始する。新たなタイトルには、『鋼の錬金術師Brotherhood』、『NARUTO疾風伝』、『イノセンス』、『ソードアート・オンライン』などがある。
今回のファニメーションの買収がイギリスにおけるビジネスの拡大、基盤づくりにあることがわかる。同時に配信ビジネスの強化も大きな目的と言っていいだろう。
ファニメーションは1994年に米国で設立された日本アニメに特化した会社で、この分野で業界トップとして知られる。その事業はアニメの流通・配給・劇場公開から、ライセンス事業、そして近年は配信サービスと多岐にわたる。「ドラゴンボール」シリーズや『鋼の錬金術師』、『進撃の巨人』、『ONE PIECE』、『僕のヒーローアカデミア』といった人気作品を多く抱える。
2017年にソニー・ピクチャーズ・テレビジョンに買収され、現在はそのグループ会社になっている。これをきっかけに急激にビジネスを拡大しており、今年3月には中国で日本アニメを扱う大手ビリビリとも提携を発表したばかりだ。
また配信事業の「FunimationNow」も重点分野だ。「FunimationNow」は現在、米国・カナダ、イギリス・アイルランド、オーストラリア・ニュージランドで展開している。しかし北米以外の地域はライセンスを保有する企業が異なることも多い。そこで今回は現地の有力企業マンガ・エンタテインメントを買収することでラインナップの強化を実現した。
マンガ・エンタテインメントの歴史は、ファニメーションよりさらに古い。1987年にロンドンで設立され、早くから日本アニメを取り扱ってきた。
1994年には米国法人も立ち上げられ、北米における日本アニメの老舗のひとつともなった。しかしその後米国法人は米国のメディア企業アンカーベイ(Anchor Bay Entertainment)に売却され、さらにアンカーベイがスターズ・メディア(Starz Media)に、スターズがライオンズゲート(Lionsgate)にと買収が繰り返された。そうしたなかで2000年代半ばから始まった日本アニメのDVD/ブルーレイの不況の煽りを受けて米国法人は2010年には活動を停止している。
今回のイギリス法人のファニメーション傘下入りで、30年以上に及ぶ独立会社としてのマンガ・エンタテインメントは歴史を閉じることになる。