2019年5月10日、大阪に本社を持つ朝日放送グループホールディングスは、DLEと資本業提携契約を締結、また同社を子会社化すると発表した。5月29日に実施するDLEの第三者割当増資の株式を全額引き受ける。払込み金額は27億7200万円。
増資完了後、朝日放送グループは発行済株式の51.96%を保有する筆頭株主になる。これによりDLEは朝日放送グループの子会社になる。現在、筆頭株主で代表取締役である椎木隆太氏の持株比率は35.64%から17.25%に、米国玩具会社ハズブロの持株比率は3.54%から1.7%に下がる。経営の朝日放送グループ主導がいっきに強まりそうだ。
DLEは2001年に現代表取締役の椎木隆太氏が設立した。フラッシュアニメ『秘密結社 鷹の爪』の大ヒットで一躍成長のチャンスを掴んだ。その後はファンョンイベント「東京ガールズコレクション」を買収するなど、アニメ・キャラクター事業というよりもブランドマネジメントにシフトする。2014年に東京証券取引所マザーズ市場に上場を果たす。さらに2016年には一部市場に上場替えした。
しかし東京証券取引所に提出した有価証券取引書の虚偽記載が発覚することでつまづく。売上高や利益の水増しが明らかになりいっきに赤字に転落した。
朝日放送グループによる子会社化は、DLEにとっては資本増強だけでなく、こうした経緯で毀損した会社の信用を補完する意味もありそうだ。業務提携では、営業協力や共同プロジェクトの推進、共同投資のほか、ライツ事業の収益分配などが含まれる。
DLEは調達した資金のうち13億円を、朝日放送グループが保有する作品の権利を活用した事業展開に使う。両社のビジネスのアライアンスは、かなり密接なものとなる。さらに残りのうち11億5200万円を新しいコンテンツの開発に投じる。
朝日放送グループにとっては放送外事業の強化につながる。同社は近年アニメ事業に力をいれている。2016年には中核会社である朝日放送のアニメ事業をスピンオフしてABCアニメーションとして別会社にしている。
DLEはアニメ制作機能も持っており、そうした事業を補完する役割を果たすだろう。在京キー局のなかでは、日本テレビのタツノコプロ、テレビ朝日のシンエイ動画といったアニメ制作会社を子会社にするケースがある。近年はフジテレビがデイヴィッドプロダクション、TBSがセブンアークスを買収するなど、そうした動きが加速している。
しかし在阪局のアニメ制作会社の買収は、これが初めてだ。放送局をも巻き込んだアニメ業界再編が、関西にも波及したかたちだ。