エンタテインメント・IP(知的財産)マネジメント事業のDLEは、2017年5月15日、2017年6月期第3四半期の決算を発表した。連結売上高は36億4900万円、そして営業損失5億4000万円、経常損失5億5900万円、当期純損失12億5000万円と、当初予想を大きく下回る厳しい結果となった。
DLEでは決算と併せて、通期業績見通しを大幅に下方修正した。連結売上高は66億4100万円から42億8600万円、営業利益の6億5500万円は8億8700万円の損失、経常利益は6億4500万円から9億1000万円の損失、当期純利益も4億9200万円から16億円の損失に変更される。急成長を続けてきたDLEの赤字転落は、キャラクター・アニメ関連業界から関心を集めそうだ。
業績修正の要因は多岐にわたる。海外事業、とりわけ中国事業での環境変化も大きい。中国の大手動画配信サイトと進めてきた共同事業が成約に至らず、交渉を中止した。また中国の女性向けファッション EC サイト運営のハイファッション・グループとの業務提携を解消したことで、越境EC事業の売上計画を約3億円減額修正する。
国内でも制作受注の見送り、納品の次期への繰り越しを行った。中国案件の中止と併せて売上高で18億円の減少となる。全体では20億円超の売上高の減額修正になる。
利益面では、これらに加えて複数の特別損失を計上する。すでに制作受注していたが人材確保が出来ないことを理由に制作継続が不可能とした映像制作の一部から撤退する。3億7900万円の事業構造改善費用を計上した。映像製作では、製作委員会への出資金のうち回収可能性がないものを1億6400万円減損処理した。
また米国と台湾の現地法人が撤退する。米国法人DLE アメリカ、台湾法人夢饗年代股份有限公司を解散、清算することで株式評価損を4400万円。中国のハイファッション・グループとの業務提携解消でも1800万円の損失を計上する。さらに投資有価証券の評価損が6500万円加わる。
DLEは2001年に代表取締役の椎木隆太氏により設立された。フラッシュアニメーションを使うことで、廉価で早く、映像制作をすることを実現。これを武器に急成長をしてきた。『秘密結社 鷹の爪』といったヒット作がある。
2014年に東京証券取引所マザーズ市場、16年には一部市場に上場している。株式上場後は、積極的な多角化戦略、海外戦略でさらなる成長を目指した。東京ガールズコレクションの商標権、運営会社の買収では大きな注目を集めた。
映像分野でも、フラッシュアニメーションだけでなく、深夜アニメへの進出、実写映画への事業拡大を掲げた。また海外、とりわけ中国進出にも積極的だった。しかし、こうした急激な展開に社内リソースが追いつかず、裏目にでたかたちだ。
DLEは、今回の赤字転落を受けて、希望退職者の募集を実施する。現在94名の社員(単体)から20名程度の退職者を募る。不採算事業の整理、経営の効率化を目指す。
希望退職者の募集、米国・台湾の現地法人撤退、中国での共同事業の交渉中止、映像制作事業の一部撤退で、DLEの事業はかなりスリム化されそうだ。フラッシュアニメーションの制作と東京ガールズコレクションを中心としたブランドマネジメントの比重が再び大きくなる。
新規事業の開発とリスク管理が、今後は問われることになる。そうしたなかでDLEの成長の鍵がどこにあるのかが注目される。