国内のアニメーション制作の作画工程でのデジタル化が進みつつある。デジタル作画にはPC上で動かせる描画ソフトが必要になるが、数ある描画ソフトのなかでアニメーターやスタジオから多くの支持を受けるのがセルシスの「CLIP STUDIO PAINT」だ。日本企業である強みを活かし、国内スタジオと協力しながら開発した日本のセルアニメスタイルに特化した使い勝手のよさを強みとしている。
この「CLIP STUDIO PAINT」が2018年秋の大幅アッブデートに合わせて、デジタル向けのタイムシート「東映アニメーションデジタルタイムシート(仮称)」の無償配布を実施する。
「東映アニメーションデジタルタイムシート(仮称)」は、仮称タイトルでわかるように国内の大手スタジオの東映アニメーションが開発したものだ。セルシスと東映アニメーションによるアニメーション制作ワークフロー構築の実証実験の中で誕生した。東映アニメーションの許諾を受けての無償配布となる。
ソフトウェアはWindowsでの利用を想定し、「CLIP STUDIO PAINT EX」とタイムシート情報を記録したファイルが双方向で連携する。タイミングや指示をタイムシートで確認しながら作業を進めることが可能になる。
今回は作画工程のうち原画部分に対応した。動画部分ついても実証実験を続けており、東映アニメーションと協議のうえ、今後の提供を検討するとしている。
アニメ業界ではデジタル作画の導入が次第に進んでいる。デジタル作画というと、紙と鉛筆でなくペンタブとタッチペンにより描く手段の変化に目を奪われがちだ。しかし、アニメ作画の重要要素のひとつが動きだ。タイムシートは動きをつくりだすタイミングに大きな役割を持っている。これが作画とスムーズに連動すれば、デジタルによる効率化に大きく貢献する。
さらに業界でバラバラないくつものソフトウェアを使用するよりも、基準になるものがあれば効率化はさらに進む。今回セルシスと東映アニメーションの無償配布にもそんな考えがありそうだ。業界全体の利益が自分たちの利益として戻ってくるというわけだ。
「CLIP STUDIO PAINT」は、アニメーション制作だけでなく、イラストやマンガ制作にも利用できるクリエイティブの汎用ソフト。2018年の秋のアップデートでは、アニメーション制作のタイムシート情報の入出力のほか、カメラワーク、オーディオの入出力なども実装する。
またコンテやレイアウトの段階でも、カメラワークの再現やサウンド確認が可能になる。線撮やプリビズにも対応できるとしている。新しい機能搭載でライバルの「TVPaint」や「Toon Boom Harmony」との差別化を目指す。