徳間書店は、アニメ総合誌「アニメージュ」の電子書籍版の配信を2018年9月10日にスタートした。この日発売になった10月号より、Amazon Kindle版、eBookJapan、honto、楽天Koboといった主要電子書籍プラットフォームで利用可能だ。
10月号では、人気のテレビアニメ『BANANA FISH』のアッシュを表紙に同作のスタッフ・声優インタビューといった特集を組んでいる。さらに10月の新番組やエッセイなど盛りだくさんの内容とした。
紙版は特別価格980円だが、デジタル版では販売希望価格を840円(税込)とやや低めに設定している。これは紙版に付属するポスターやクリアファイルなどの付録が含まれないこと、プレゼントや懸賞でも一部、デジタル版は対応しない場合もあるためとみられる。
また徳間書店では、雑誌の内容についても、一部異なる場合があるとしている。これはアニメ雑誌が扱う題材の特性から著作権が煩雑で、紙版とデジタルで異なる権利を処理できないケースがあるためと見られる。
権利処理の難しさから、長らくアニメ雑誌は電子化には向かないとされることが多かった。マンガ雑誌や一般情報誌に較べてデジタル配信が遅れている理由でもある。
しかし、2017年4月に学研が刊行する「アニメディア」は有力アニメ誌で初めて電子化に踏み切った。さらに2018年4月には同じ学研の「メガミマガジン」、「オトメディア」もデジタル配信をスタート。「アニメージュ」はこれらに続く、電子書籍への取り組みとなる。今後は有力総合アニメ誌でまだデジタル化をしていない「ニュータイプ」(KADOKAWA)の行方が注目される。
徳間書店は、1954年設立の老舗出版社として知られる。「アニメージュ」のほかに「ボイスアニメージュ」や「週刊アサヒ芸能」といった雑誌を刊行している。
「アニメージュ」は徳間書店の主力雑誌で、『宇宙戦艦ヤマト』からのアニメブームを受け、1978年に創刊した。現在まで続くアニメ雑誌で最も長い歴史を誇る。
創刊後は、『機動戦士ガンダム』ブームなども経て、アニメファンダムで重要な役割を果たしてきた。また同誌で連載された『風の谷のナウシカ』が作者である宮崎駿自身が監督になりアニメ化され、それが後のスタジオジブリの設立につながっていく。
経営面では、2017年3月にカルチュア・コンビニエンス・クラブグループのカルチュア・エンタテインメント株式会社の子会社となる大きな転機があった。経営面の変化も、今回のデジタル化を後押した可能性が高い。
ファンに長らく待たれていた老舗のアニメ雑誌のデジタル配信は、アニメメディアの時代の変化も感じさせる。