映像コンテンツのつなぎ融資ファンド、クールジャパン機構など出資 53億円を運用

提携

 自己資金でアニメ、映画、ドラマなどを製作する制作会社向け融資に特化したコンテンツファンドが設立される。2018年8月3日、クールジャパン機構(株式会社海外需要開拓支援機構)は、NTTぷらら、YDクリエイション、文藝春秋、イオンエンターテイメントと共同出資する「株式会社ジャパンコンテンツファクトリー」を設立したことを明らかにした。
 作品完成後の権利販売代金を受けとるまで、制作会社が先行投資する制作費用を融資する。制作開始から投資回収までの間の資金のギャップを埋める狙いがある。事業開始は2018年秋頃を予定している。

 ファンドの大きな狙いは、日本の映像制作会社の海外展開支援だ。その背景には、グローバル規模に配信ネットワークを持つ映像配信会社の事業拡大がある。
 NetflixやAmazonといった配信会社は、近年、日本だけでなく海外でも人気を獲得出来るコンテンツとして、日本のアニメやドラマ、バラエティー番組の配信ライセンスを購入している。
 なかでもオリジナルコンテンツが注目されている。番組完成後に配信会社が配信ライセンスを購入する前提で、制作会社は番組を企画・制作する。これまでと異なったテーマやフォーマットなどの新しい作品も生まれる。

 ビジネスのかたちも大きく変る。特にアニメや映画では、配信会社はこれまで製作委員会を通じてライセンスを獲得することが多かった。しかしオリジナルコンテンツでは、アニメ制作会社、映像制作会社と直接契約することが増えている。制作受託が中心だった国内映像制作会社の自立につながるのではとも期待されている。
 しかし配信会社の支払いは、作品完成、配信開始後からの分割とされることが多い。オリジナル作品に対応するには、制作会社は企画・制作期間に億単位の先行投資が必要となる。資金余力の少ない中小の制作会社にとっては、ハードルが高い。
 ジャパンコンテンツファクトリーはこの期間の制作資金を融資することで、中小の制作会社のビジネスチャンス拡大と活性化を目指す。

 クールジャパン機構は2013年に、「日本の魅力(クールジャパン)」を打ち出した事業の海外需要開拓支援を目的に、官民ファンドとして設立された。これまでは海外における日本コンテンツの放送局設立、音楽ライブホールの海外展開、海外でのリテール事業などに投資してきた。しかし昨今は投資案件の採算性や、「クールジャパン」の定義の曖昧さなどの課題も指摘されていた。
 そうしたなかで発表されたジャパンコンテンツファクトリーは、ゼロから立ち上がる事業でなく、業界で必要とされる機能を埋める支援型事業となる。これまでとやや異なる方向性が見える。また映像制作を対象とすることで、あらためてエンタテイメントコンテンツにフォーカスする視点も見える。

 クールジャパン機構は、ファンド運営会社ジャパンコンテンツファクトリーの資本金の29.4%にあたる1億5000万円を出資。これとは別にジャパンコンテンツファクトリーが運用するファンド「ジャパンコンテンツファクトリー投資事業有限責任組合」に50億円を融資する。資本金と合わせて53億円が、映像制作のための融資に充てられる。融資を含めた経営は民間主導とし、クールジャパン機構は主に資金の出し手の役割が中心だ。
 筆頭株主のNTTぷららの出資比率は39.2%。同社は5月にアニメ製作のI.Gポートにも出資したばかりだ。I.Gポートは配信大手のNetflixと包括的業務提携を結んでいる。
 さらに出資比率第3位のYDクリエイションは、吉本興業と電通が共同出資する製作会社。Amazonオリジナル『バチュラー・ジャパン』、『これが無いなら来なかった~又吉直樹の宮古島』、Netflixオリジナルドラマ『火花』などの製作を手がけている。さらに出版社の文藝春秋、映画製作・興行のイオンエンターテイメントが出資者に加わる。

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