■ 3年間で1200億円の新たな事業創出の鍵は、「IP」「ライブ」「中国」
業績好調を続けるバンダイナムコホールディングス(バンダイナムコHD)が、2018年以降、さらなる事業成長を目指す。2月9日に、2018年4月から21年3月までの3ヶ年に向けた新中期計画を発表した。
今後3年間で売上高と営業利益で、それぞれ過去最高の7500億円と750億円を目標とする。ROEは10%以上を維持し、規模の拡大と収益性を同時に実現する。
バンダイナムコHDはバンダイとナムコの経営統合で誕生した2006年は売上高4508億円だったが、2010年には3785億円まで落ち込む不振も経験した。近年はゲーム関連事業の復調や映像音楽事業の拡大もあり、順調に業績を伸ばしている。
現在の中期経営計画である売上高6000億円、営業利益600億円は、すでに2017年3月期に達成している。18年3月期の連結売上高の予想は6300億円である。そこでさらに高い目標を掲げる。国内エンタテイメント企業で売上高7500億円という、これまでにない規模の企業を目指す。
一方で、3年間で1200億円の新たな事業創出のハードルは低くない。グループは既に広い領域で事業を手がけているからだ。新たな市場はどこにあるのか? その結論は、「IP創出」、「ライブエンタテインメント」、「中国」といったキーワードから理解される。
4月1日に実施される組織再編からもこれらは読み取れる。組織再編では、まず「トイホビー」、「ネットワークエンターテインメント(ゲーム)」、「映像音楽プロデュース」とこれまで3つあった事業セグメントを5つにする。
ひとつは「映像音楽プロデュース」からアニメーション制作のサンライズを切り出す「IPクリエイション」。もうひとつは「ネットワークエンターテインメント」からナムコを切り出した「リアルエンターテイメント」だ。バンダイナムコエンターテインメントのアミューズメント機器事業をナムコに統合したうえで社名をバンダイナムコアミューズメントに変更する。これが「リアルエンターテイメント」を担当する。一度は最盛期が去ったと思われたアミューズメント事業が体験型消費の盛り上がりで再活性化される。
■ 新たに戦略投資250億円 ライブイベント施設に中国現地法人も
新事業のためには大型投資も辞さない。これまでの通常投資に加え3年間で、グループ全体で250 億円の戦略投資を行うと予定だ。すでに東京・渋谷にライブイベント施設のための用地を取得した。
また海外、とりわけ中国が戦略市場となる。現在は「ネットワークエンターテイメント」の現地法人を設置しているが、「トイホビー」、「映像音楽プロデュース」の現地子会社設立も検討している。新分野に全方位で挑む構えだ。
組織再編は、この他の分野にも及んでいる。「トイホビー」ではバンダイで大人マーケットを担当していたハイターゲット向け事業部門をスピンオフし、さらにバンプレストの景品事業部門を吸収した新会社BANDAI SPIRITSを設立する。大人市場も今後の成長分野というわけだ。
映像音楽プロデュースでは、映像のバンダイビジュアルと音楽のランティスを合併しバンダイナムコアーツを設立する。映像・音楽、さらにここでもライブ分野を開拓し、新分野に進出するとしている。舞台や大型イベントが新たな進出候補とみられる。
玩具業界1位のバンダイとゲーム業界大手のナムコの経営統合が世を驚かせてから12年。経営統合以来最大のグループ改革が、さらなる成長のエンジンになるのか? 日本だけでなく、世界のエンタテイメント業界から注目されそうだ。