中国で日本映画が次々に公開され活気づいている。2016年8月までに『ドラえもん 新・のび太の日本誕生』、『BORUTO -NARUTO THE MOVIE-』、『聖闘士星矢 Legend of Sanctuary』、『ビリギャル』の4本が公開されたが、9月にさらに2本が加わる。
9月2日より映画『寄生獣』の全国公開がスタートしたのに加え、9月23日からは『映画ちびまる子ちゃん イタリアから来た少年』の上映もスタートする。
映画『寄生獣』は、2014年11月と15年4月に『寄生獣』『寄生獣 完結編』の2部作として相次いで公開された。監督は山崎貴、染谷将太が主演する。人間に寄生するパラサイトが出現した世界で起きる戦いを描く。日本では興行収入が前編20億円、後編15億円のヒット作となった。
中国公開にあたっては、2本の映画を新たに編集しひとつの映画とした。日本ではR-12指定とバイオレンスシーンも多かっただけに、中国向けに再編集されたようだ。
配給はChina Film Group/EDKOで、9月2日の公開から3日間の興行収入は2491万元(約3億8000万円)と週末興行第3位で登場と出足は堅調だ。5日には早くも『ビリギャル』の3758万元に迫る3070万元 に達している。同じ週末の1位は『スター・トレック BEYOND』、2位は公開第3週目の『アイスエイジ5』である。
一方、『ちびまる子ちゃん』は、9月23日からの公開。こちらの配給はChina Film Groupとアイチーイーとなる。映像配信の大手アイチーイーの劇場映画進出のひとつに日本の人気アニメをピックアップした。
日本でお馴染みの『ちびまる子ちゃん』は、香港、台湾などの中国語圏でも人気が高い。中国本土でも衛星放送の大手・星空卫視でテレビ放送されていた。シリーズ23年ぶりの劇場アニメは中国でも話題を呼びそうだ。
相次ぐ日本映画だが、これは中国映画市場の大きな変化である。中国は、海外映画の劇場上映の許諾に厳しい制限を設けている。年間で公開できるのは、利益分配方式と版権買切りのふたつの方式を併せても60作品あまりだ。この枠に入るのが難しい。
日中合作映画を除くと、2015年は『STAND BY ME ドラえもん』と『名探偵コナン 業火の向日葵』の2本のみ、2013年、2014年は上映がないから様変わりだ。特に『ビリギャル』と『寄生獣』は実写映画としては、2012年の『ウルトラマンゼロ THE MOVIE 超決戦!ベリアル銀河帝国』以来、ファミリー・キッズ以外では2011年の『ノルウェーの森』から5年ぶりである。
日本映画の増加は、2015年の『STAND BY ME ドラえもん』が大ヒット、日本円で80億円以上の興収を上げたことも大きいだろう。日本映画も作品によってはハリウッド映画並みのビジネスが期待できるというわけである。さらにアニメだけでなく、実写映画の話題作にトライする。大規模公開を実現した『寄生獣』がどれだけ観客を集めるかは、今後の鍵になるだろう。
一方で、ビジネスの現場と行政の思惑が、しばしばずれることは中国のコンテンツ業界には少なくない。アニメを中心とした中国向けの映像配信、日本のコンテンツを原作とした中国映画の制作など、日中間の映画ビジネスがこれまでになく盛り上がりをみせる中で、こうした環境が今後も続くが注目される。
中国公開された日本映画 (2011年以降)
(興行成績)[2016年]
『ドラえもん 新・のび太の日本誕生』 (1億359万元)
『ボルト- -NARUTO THE MOVIE-』 (1億322万元)
『聖闘士星矢Legend of Sanctuary』 (3787万元)
『ビリギャル』 (3758万元)
『寄生獣』 (3045万元) *9月2日公開、上映中
『ちびまる子ちゃん イタリアから来た少年』 *9月23日公開[2015年]
『STAND BY ME ドラえもん』 (5億3029万元)
『名探偵コナン 業火の向日葵』 (8161万元)[2012年]
『ウルトラマンゼロ THE MOVIE 超決戦!ベリアル銀河帝国』 (1956万元)[2011年]
『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』 (2901万元)
『名探偵コナン 沈黙の15分』 (2667万元)
『ノルウェーの森』 (294万元)
『チベットの犬』 (149万元)
『GOEMON』 (111万元)