現在、大ヒット中のアニメ『【推しの子】』のアニメーション制作スタジオが、KADOKAWAグループに加わることになった。2024年7月11日、KADOKAWAは老舗のアニメーション制作会社動画工房の株式を取得、子会社化すると発表した。取得株式比率や譲渡金額などは公表されていない。
動画工房は1973年設立で50年以上の歴史を誇る老舗のアニメスタジオだ。従業員数 62名と業界では中堅規模となる。歴史が長い一方で、アニメーション制作全体を統括する元請制作に積極的になったのは、アニメーション制作本数が増えてきた2000年代後半以降と比較的新しい。ヒット作には『ゆるゆり』、『月刊少女野崎くん』、『NEW GAME!』などがある。ファンの間では丁寧な作画で定評があり、人気も高い。
KADOKAWAが製作する作品を担当することも多く、ビジネス的には近い関係にあった。なかでも2023年にKADOKAWAが製作主幹事を務め、動画工房がアニメーション制作をした『【推しの子】』は大ヒットになった。
KADOKAWAは今後の成長戦略としてエンタテインメントの世界展開を掲げ、その軸になるアニメ製作に注力している。さらに自社グループでそうした作品のアニメーション制作を手がけることを目指す。かつてKADOKAWAは、アニメ製作を手がける大手のなかでは自社スタジオを持たない会社とされてきた。
しかし2018年に共同出資でENGIを設立、2019年にキネマシトラスに出資、2021年にStudio KADAN設立と、アニメーション制作分野への進出を強めている。さらに2024年になってレイジングブル、ベルノックスフィルムズが相次いで立ち上がることで加速している。
動画工房が加わることでグループアニメスタジオは6社にもなり、KADOKAWAの制作力はさらに大きくなる。アニメーション制作の人材不足、受託スタジオが不足するなかで、優位な位置を築くことも可能だ、
KADOKAWAに限らず、近年は作品制作受託を出来るアニメーション制作会社の不足を背景に、大手企業によるアニメーション制作会社の買収が相次いでいる。2024年になり、それがさらに加速しているようだ。
3月には業界大手のバンダイナムコフィルムワークスが『ブルーロック』を手がけるエイトビットを完全子会社化、5月には大手映画会社の東宝が国内外で評価の高いサイエンスSARUを完全子会社化した。今回のKADOKAWAの動画工房は、それに続く動きと言っていいだろう。
いずれにも共通するのが、近年、話題を呼んだ大型ヒット作を制作しているスタジオであり、買収側がそうした作品の製作出資をしていることだ。これまでアニメは、作品の制作と作品の流通・配給は資本的には分離していることが多かった。現在は、企画・制作・流通が統合されていく流れが強まっている。