■ 興収15.6%減も 邦画が全体の過半を占める
一般社団法人 日本映画製作者連盟(映連)は、2018年1月25日に2017年の国内映画興業の概況を明らかにした。発表によれば、2017年の国内の映画興業(チケット売上げ)の総合計は2285億7200万円となった。前年比では2.9%の減少となるが、劇場アニメ『君の名は。』の大ヒットがあった2016年に続き歴代2位。近年の劇場興行の活況を感じさせる。
しかし、邦画・洋画を区別して見ると大きな変動があった。邦画は2016年にあった『君の名は。』や『シン・ゴジラ』に相当するメガヒットがなく、興行収入は1254億8300万円と前年比15.6%と二桁の減少となった。逆に『美女と野獣』が124億円と年間興行収入トップとなった洋画は1030億8900万円と18.6%増で好調だった。全体に占める割合は36.9%から45.1%に拡大したが、依然邦画が全体の過半を占めている。
■ 上がらぬチケット単価、増えるスクリーン
劇場への入場者数は1億7448万3000人で、こちらも3.2%とやや減少した。さらにチケットの平均支払価格は1310円と、前年の1307円とほぼ変化がない。劇場はIMAXや4DXなどの客単価の高い興行に注力するが、全体で見れば平均入場料にはそれほど大きなインパクトを与えていないみたいだ。これは例えば北米市場では、毎年平均チケット価格が徐々に上昇しているのに比べると対称的だ。2017年の北米の平均チケット価格は8.93ドル(前年比3.2%増)だった。
また映画興業の盛況もあり、公開本数も堅調である。1年間に劇場公開された映画は1187本と3.3%の増加。こちらも洋画が10%増の593本が牽引した。アニメを含む邦画は594本(2.2%減)である。
さらに劇場スクリーン数も、興行が盛況のなかで安定している。2017年時点で3525スクリーンと前年より、53スクリーンの増加となっている。
映連は2017年度(2016年クリスマス・年末シーズンから2017年12月始めまで)に、国内公開された興行収入10億円以上の作品の数字も明らかにしている。邦画が全部で38本、洋画が24本、合わせて62本だ。こちらも洋画に勢いがあり、邦画前年の42本から減らしたのに対して、洋画は19本から5本増えた。
■ アニメは邦画全体の約4割、アニプレックスに勢い
邦画アニメは『君の名は。』のようなメガヒットはなかったが、10億円以上の作品は前年度の11本とほぼ同じ10本。シリーズ最高68.9億円を稼ぎ出し邦画トップにもなった『名探偵コナン から紅の恋歌(ラブレター)』や『映画ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険』(63.3億円)、『劇場版ポケットモンスター キミにきめた!』(35.5億円)が健闘した。
オリジナル企画では、スタジオポノックの初の長編映画『メアリと魔女の花』(32.9億円)、シャフトがアニメーション制作を担当した『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』(15.9億円)が目立った。さらにアニプレックス配給の『劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-』(25.2億円)、『劇場版「Fate/stay night [Heaven’s Feel]」Ⅰ.presage flower』(14.5億円)が、大きなヒットになった。
興収10億円以上の邦画でアニメの売上の占める割合は38.2%と、全体の4割近くになる。2016年度の48.5%には及ばないが、依然、アニメの存在感は大きい。
■ イルミネーションとディズニー/ピクサーの寡占状態 洋画アニメーション
洋画アニメは、少数の大ヒット作とそれ以外の格差が大きい。10億円以上は前年と同じ4本にとどまっている。2017年の大ヒット作はイルミネーションの『怪盗グルーのミニオン大脱走』(73.1億円)、『SING/シング』(51.1億円)の2作品、そしてディズニーの『モアナと伝説の海』(51.6億円)である。これにピクサーの『カーズ/クロスロード』(18億円)が加わる。
大ヒット作を2本送り出したイルミネーションに勢いが感じられる。しかし、逆に言えば、イルミネーション、ディズニー・ピクサー以外からの10億円超のヒットはハードルが高くなっている。
一方、2018年からは、ドリームワークス・アニメーションが『ボス・ベイビー』で日本公開に復帰する。また、海外の長編アニメーションの公開本数も徐々に増えており、今後はそうした動向が興行にどういった影響を与えるが注目される。
[2017年度 国内興行収入10億円超の日本アニメ映画]
『名探偵コナン から紅の恋歌(ラブレター)』 68.9億円 (東宝)
『映画ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険』 44.3億円 (東宝)
『劇場版ポケットモンスター キミにきめた!』 35.5億円 (東宝)
『メアリと魔女の花』 32.9億円 (東宝)
『映画 妖怪ウォッチ 空飛ぶクジラとダブル世界の大冒険だニャン!』 32.6億円 (東宝)
『劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-』 25.2億円 (アニプレックス)
『映画クレヨンしんちゃん 襲来!!宇宙人シリリ』 16.2億円 (東宝)
『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』 15.9億円 (東宝)
『劇場版「Fate/stay night [Heaven’s Feel]」Ⅰ.presage flower』 14.5億円 (アニプレックス)
『劇場版 黒子のバスケ LAST GAME』 10.6億円 (松竹)
[2017年度 国内興行収入10億円超の洋画アニメーション映画]
『怪盗グルーのミニオン大脱走』 73.1億円 (東宝東和)
『モアナと伝説の海』 51.6億円 (ディズニー)
『SING/シング』 51.1億円 (東宝東和)
『カーズ/クロスロード』 18億円 (ディズニー)