講談社は海外のマンガファンに向けた新たなビジネスに乗り出した。2016年12月3日に同社の米国子会社Kodansha Advanced Mediaはマンガアプリ「Attack on Titan manga」をApp Storeでリリースした。英語版とスペイン語版のふたつで『進撃の巨人』を楽しめる。
マンガ家・諫山創による『進撃の巨人』の全てが購読可能になるだけでなく、本編から派生したスピンオフのマンガも網羅する。これらはアプリ内で簡単に購読することができ、日本でのマンガ連載に合わせて、新エピソードも追加されていく。
作品はこれまでも、紙書籍のほか電子書籍として北米のKodansha Comicsから発売されている。特に電子書籍は、Amazon Kindle、iBooks、NOOK、Kobo、それにcomiXologyと北米地域の主要な電子書籍配信プラッットホームをカバーする。これにスマートフォン向けのアプリが加わることになる。
しかし、専用アプリでの配信スタートは、流通経路がひとつ増えた以上の重みがある。大手配信プラットフォームの利用は、価格決定やプロモーション、情報配信を相手先に依存する部分が大きくなりがちだからだ。しかし、アプリであれば、価格設定やリリースのタイミング、情報の出し方などは、自らコントロールすることが可能になる。テレビアニメの放送やイベントの開催などを絡めた独自のメディアミックスといった柔軟なマーケティングも可能になる。
さらに最新情報を届けることで、ファンの囲い込みも可能になる。よりダイレクにユーザーに接することでビジネスチャンスも広がる。
ファンコミュニティの形成は、アプリならではの無料コンテンツの配信が力を発揮しそうだ。2017年に放送開始が決定しているテレビアニメ『進撃の巨人』のスタッフインタビューやプロモーション映像が。現在は目玉になっている。テレビアニメ第1期の放送・配信は、米国でもマンガの売上を大きく押し上げただけに、今回もマンガとアニメの連動に大きな期待がかかる。。
事業を手掛けるKodansha Advanced Mediaは、2014年にサンフランシスコに設立された講談社の米国現地法人。講談社は出版業務の現地法人をニューヨークに持つが、Kodansha Advanced Mediaはデジタル配信やデジタルメディアの開発や運営を担当している。
今回はスマホアプリを活用することで、従来の流通に頼らず、さらに新たなマーケティングを実現する。まずは大型タイトルでのスタートなったが、これが成功すれば、他のタイトルに広がる可能性もあるだろう。
Kodansha Comics(米国) http://kodanshacomics.com/