多くのファンから支援金を集めてプロジェクトを実現する「クラウドファンディング」。最近は、日本でも多くの事業者、プラットフォームが活躍し、その存在は珍しくなくなっている。初めは小さなビジネスであったが、扱うプロジェクトの数も規模も急成長を遂げている。
そんな日本のクラウドファンディングのプラットフォームに、巨大なライバルが現れそうだ。米国の巨大クラウドファンディングのプラットフォーム「Kickstarter」が、2017年9月に「Kickstarter JAPAN」をスタートすることが明らかになった。かねてより日本進出を噂されてきたKickstarterだけに、驚きというよりも、いよいよという印象が強いかもしれない。
世界中にあまたあるクラウドファンディングのプラットフォームだが、Kickstarterが注目されるのは、2009年スタートといち早く事業に取り組んだことによる抜群の知名度と、集客力にある。日本でも海外向けのプロジェクトを打ち立てる際には、これまでも英語版のKickstarterを利用するケースが多かった。
一方で、プロジェクトを提案できるのは米国に拠点がある場合に限定されること、ドル決済で日本居住者からの支払いが複雑なことが利用の拡大を妨げていた。プロジェクトの立案者は、国内では日本のプラットフォーム、海外ではKickstarterと2箇所でクラウドファンディングを実施するケースもあった。
今回の日本進出で、こうした問題が解決する。ひとつのプラットフォームで、日本と海外の支援者にリーチできることがKickstarter JAPANの強みになるだろう。
Kickstarterの日本進出は、アニメやマンガ、映画、ゲーム関係者からも注目を集めそうだ。もともとKickstarterはコンテンツ系のプロジェクトを得意とし、映画やコミック、ゲーム、出版、音楽、アート、舞台といったカテゴリーを持つ。
日本アニメでも、これまでに英語版Kickstarterで成功を収めたプロジェクトは少なくない。2013年に62万5000ドルを集めたトリガーの『リトルウィッチ・アカデミア』は、これがきっかけに劇場映画が製作された。2015年の安藤真裕監督の『UNDER THE DOG』は87万8000ドルを集めOVAを制作、2012年の『キック・ハート』ではプロダクション I.Gが湯浅政明監督の短編アニメを制作している。2016年末にはビジュアルノベルゲーム『ネコぱら』のアニメ企画で、日本アニメのプロジェクトで過去最高の96万ドル、1億円以上の調達に成功している。
資金調達だけでなく、Kickstarterでのキャンペーンがより大きなプロジェクトにつながるケースもある。先日、「Netflixアニメスレート2017」で企画、配信決定が発表された『キャノンバスターズ』が世間から注目を集めるきっかけは、Kickstarterである。日本だけでなく、海外にリーチすることで、そうしたチャンスも広がるわけだ。
日本では後発の事業者となるが、日本企業にないサービスもある。Kickstarterがエンタテイメントのプロジェクトに、どんなインパクトを与えるかの関心を集めそうだ。
Kickstarter JAPAN
https://www.kickstarter.com/japan