NBCユニバーサル、ドリームワークス・アニメーションの買収完了 ハリウッドのアニメ業界2強体制へ


2016年8月22日(現地時間)、米国のメディア・通信コングロマリットのコムキャストによるアニメーション製作会社ドリームワークス・アニメーションSKG(DWA)の買収が完了した。コムキャストのエンタテインメント部門であるNBCユニバーサルとDWAより発表された。
買収総額は38億ドル(約3800億円)。今回の買収により、DWAは8月22日付で米国NASDAQ市場での上場は廃止となる。取引所での最終取引価格は40.97ドルと、コムキャストの一株当たりの取得価額41ドルとほぼ同じだった。

ドリームワークス・アニメーションは、1994年にスティーヴン・スピルバーグ、デヴィッド・ゲフィン、ジェフリー・カッツェンバーグのハリウッドの大物3人が共同で立ち上げた映画会社ドリームワークスSKGに源流がある。文字どおりドリームチームの独立系映画会社として脚光を浴びた。
2000年にアニメーション製作のドリームワークス・アニメーションを設立。ドリームワークスからスピンオフするかたちで2004年に上場し、その後は別会社として歩み始める。

しかし、2000年代後半よりCGアニメーション映画を作るライバル会社の台頭と、配給会社との条件交渉などで苦しみ、業績が伸び悩んでいた。そうしたなかでテレビアニメーションやキャラクタービジネス、配信会社との共同事業などに次々に乗り出した。
なかでも中国進出には熱心で、現地に米中共同出資のアニメーションスタジオのオリエンタル・ドリームワークスを設けるほどだった。このスタジオで製作された『カンフーパンダ3』は中国で大ヒットになった。先日発表された2016年第2四半期決算は、売上高9780万ドル(10.8%増) 、営業利益4010万ドル(36.9%増)と業績好調で、これに一役買っている。

一方で、かねてより企業買収の噂が絶えず、最終的にハリウッドメジャーの一角をなすNBCユニバーサルを持つ、コムキャストが買収に乗り出した。企業売却はCEOであったジェフリー・カッツェンバーグの経営からの引退の意向も反映されていたとみられる。
DWAは買収された後は、ユニバーサル・ピクチャーズ、ファンダンゴ、NBCユニバーサル・ブランドと伴にユニバーサル・フィルム・エンタテイメント・グループに加わる。すでにグループ子会社であるもうひとつのアニメーション製作会社イルミネーション・エンターテインメントとも協業していく。
しかし、カッツェンバーグはデジタル配信やその番組制作のドリームワークス・ニューメディアの社長となるがDWAの経営からは事実上離れる。スタジオの経営はカッツェンバーグの手からイルミネーションのCEOであるクリス・メレンダンドリに引き継がれるかたちだ。

今回の買収によりNBCユニバーサルは、「シュレック」シリーズや「ヒックとドラゴン」シリーズ、「カンフーパンダ」シリーズなどの大型プロパティを手に入れる。イルミネーションの「怪盗グルー」シリ-ズ、『ペット』なども含めると強力なラインナップが実現する。
ハリウッドのアニメーション映画界は、ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオとピクサー・アニメーション・スタジオのふたつを持つウォルト・ディズニーと、イルミネーションとDWAを擁するNBCユニバーサルの2強体制が出来上がったと言えそうだ。
米国の歴代アニメーション映画の興業ランンキングは1位から17位までを全てこの4スタジオで埋め尽くし、30位まででは29作品を占めるほどだ。近年、メジャー各社は大型ヒットの狙えるCGアニメーションに注力するが、今後はディズニーとNBCユニバーサルにどのように対抗するかが大きな課題になるだろう。

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