TVアニメ「魔法使いの嫁」 IGグループで6割出資 海外配信はクランチロールと優酷

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 IGポートは、3月10日に製作発表したテレビアニメ『魔法使いの嫁』の出資のうち60%をグループ各社で負担する。出資するのはIGポートのグループ会社のプロダクション I.G、マッグガーデン、ウィットスタジオ。2017年3月22日に「魔法使いの嫁製作委員会」を特定子会社にし、連結子会社化することに合せて発表された。製作委員会への出資金額が全体の10%を超えると特定子会社として企業の業績に反映させることが必要となるが、連結子会社化はそれを踏まえたものだ。

 アニメ製作では一般に、製作委員会と呼ばれる複数社の出資による事業体が組成される。出資企業による共同事業として製作をするためである。出資金の分担は、リスクの分散や、作品に関わる各種権利をそれぞれの企業が獲得してビジネスにつなげるためだ。
 これまでの深夜アニメの製作は、この出資の大半を映像ソフトメーカーが負担してきた。深夜アニメの収益のほとんどがDVDやBlu-rayの映像ソフトで回収されるためだ。さらにこれに音楽会社や放送局、映画会社、広告代理店が加わる。

 ところが『魔法使いの嫁』では、アニメーション制作のプロダクション I.Gが50%、ウィットスタジオが5%、マンガ原作のマッグガーデンが5%とそれぞれ出資する。さらに音楽会社フライングドッグが10%、前作の映画上映の配給を担当した松竹が30%、映像ソフトは松竹が担当する可能性が高そうだが、大手メーカーは参加していない。
 従来はアニメーション制作のスタジオは製作委員会に加わらないことが多く、また出資してもその割合は大きくなかった。ところが『魔法使いの嫁』では、IGグループがビジネスの主導権を取る。

 さらに本作のアニメーション制作はウィットスタジオが担当、50%出資のプロダクション I.Gではない。プロダクション I.Gのここでの役割は制作ではなく、製作投資会社、幹事会社としてのビジネスの取り回しである。ビジネススキームを作り、マーケティングをし、各種権利の販売もする。
 60%の出資をすることで、IGは番組販売権、配信権(自動公衆送信化事業)、商品化権、イベント・タイアップ権、海外利用権を獲得している。アニメを制作するだけでなく、ビジネスの主体へと変化している。

 これまでと異なる出資構成は挑戦的なビジネスだ。しかし、収益化の鍵は同時に発表された海外配信にありそうだ。IGは『魔法使いの嫁』の北米配信はCrunchyrollが、中国は優酷が決まっていることを明らかにしている。海外配信権は番組放送直前に決まることが多いが、今回は半年以上前に決定したことになる。この米中2社への海外配信権の販売が、収入の多くをカバーしているとみられる。
 IGポートでは、2016年7月にはやはり50%をプロダクション I.Gが出資する「CYBORG009 CALL OF JUSTICE」製作委員会も特定子会社している。こちらは出資者はプロダクション I.Gと石森プロの2社だ。アニメーション制作はグループ会社のシグナル・エムディだから、プロダクション I.Gの役割はここでも製作投資とビジネスの統括である。さらに『CYBORG009 CALL OF JUSTICE』は、グロバール映像配信プラットフォームNetflixが独占配信する。テレビアニメ『魔法使いの嫁』と同じビジネススキームが組まれている。
 IGポートは海外配信会社と直接つながることで、新しいかたちのアニメ会社に変わりはじめている。同社は資本力も、権利ビジネスのノウハウも持つことから、比較的容易にこうしたかたちが構築できたと言える。今後、他のアニメ制作会社がIGポートに続けるのか、アニメ業界の関心が集まるだろう。

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