書籍や映像・音楽ソフトの販売・レンタルの大手カルチュア・コンビニエンス・クラブが、出版社の徳間書店を子会社化する。2017年3月21日、同社はグループ会社のカルチュア・エンタテインメントを通じて徳間書店の株式を取得し、同日付けで子会社化したと発表した。
CCCグループはこれまでも徳間書店の株式の一部を保有していたが、株式を買い増し、グループ会社化することで経営により深く関わることになりそうだ。徳間書店はアニメ情報の老舗雑誌「月刊 アニメージュ」の出版元でもある。今回の子会社化は、アニメ関係者からも関心を集めている。
徳間書店は1954年に東西芸能出版社として創業、「週刊アサヒ芸能新聞」を引き継ぐことでスタートした。その後、社名は徳間書店となり、月刊「アニメージュ」や「Goods Press」などの雑誌を刊行する。このほか児童書や文庫、単行本などを手がけて、総合出版社として活動する。
また1970年代から90年代にかけては、新聞や音楽出版、映画事業などにも進出し、総合エンタテイメント会社の陣容を備えていた。しかし、積極的な拡大戦略が裏目にでて、2000年代に関連事業を次々に売却、近年は経営は苦戦していたと見られている。今回のCCCグループ入りで、これまでより安定的な経営が期待される。
徳間書店の幅広い事業のなかでも、特にアニメは一時代を築いた。1978年創刊の「月刊 アニメージュ」は39年の歴史を持ち、現在まで続くアニメ雑誌のなかで最も古い歴史を持つ。アニメ情報をファンへの届ける方法の雛形を生みだしたと言ってもいい。
また、アニメ監督の宮崎駿の初めて連載マンガとして『風の谷のナウシカ』を掲載。その後これをアニメ映画として、博報堂と共同製作した。これはやがてスタジオジブリ事業本部となり、後の株式会社スタジオジブリにつながる。スタジオジブリ、そして高畑勲、宮崎駿の育ての親と言える存在である。このほかにも、『銀河英雄伝説』、『電脳コイル』など数々の傑作アニメを製作してきた。新たな経営のなかで、今後も日本アニメの文化を紡いでいくことが期待される。
一方、CCCグループは、事業の多角化を積極的に進めている。特に近年目立つのが出版事業である。2014年に阪急コミュニケーションズより出版事業を買収、「Pen」や「ニューズウィーク日本版」の刊行を担うことになった。2015年には「美術手帖」で知られる美術出版社が民事再生法の適用を受けたのを機に子会社化している。
小売業の出版事業進出ではあるが、「Pen」、「美術手帖」、「アニメージュ」、「Goods Press」といった雑誌からは、カルチャー分野、ライフスタイル分野への志向が見て取れる。実店舗でもライフスタイル提案型の蔦屋書店の出店を進めるなど、CCCグループの目指す方向性がここでも反映されていることがわかる。
それでも書籍小売大手の出版進出が、どのような相乗効果を発揮するのかは未知数だ。今後の展開と成果が注目される。