2017年1月7日、米国カリフォルニア州のビバリー・ヒルトンホテルにて、第74回ゴールデングローブ賞の授賞式が開催された。各部門の受賞者もこの場で発表され、最優秀アニメーション映画賞にはディズニー・アニメーション・スタジオの製作した『ズートピア』が輝いた。
ゴールデングローブ賞はハリウッド外国人映画記者協会の投票により、その前年に活躍した映画・テレビ番組から最も優れた作品、スタッフを顕彰する。アニメーション映画部門は2006年より設けられている。
今回は『ズートピア』のほか、同じディズニーの『モアナと伝説の海』、ヨーロッパ作品『My Life As A Zucchini』、イルミネーションの『Sing』、そしてストップモーションの『Kubo and the Two Strings』がノミネートに挙がっていた。この中から映像の素晴らしさ、豊かな世界観、そして心に迫るテーマ性で『ズートピア』が一歩抜け出したかたちだ。
ゴールデングローブ賞は、1月末に各部門ノミネート、そして2月28日に発表される米国アカデミー賞の前哨戦としても知られている。『ズートピア』は、アカデミー賞の長編アニメーション部門の有力候補にもなりそうだ。
『ズートピア』は、作中で人の心の中にある差別や偏見に対する問題を取り上げている。人種差別的な発言が多い次期大統領のトランプ氏に反発するハリウッド関係者には、『ズートピア』を強くアピールしたい気持ちも大きいとみられる。『ズートピア』はゴールデングローブ賞のほか、ニューヨーク映画批評家協会賞、映画批評家協会賞でも最優秀長編アニメーション賞を受賞している。
一方で、予想どおりに進まないことが多いのもまた賞レースである。『ズートピア』の強力なライバルになりそうなのが、ストップモーション(コマ撮り)アニメーションで世界に名を馳せるライカの最新作『Kubo and the Two Strings』である。中世の日本を舞台にした異色作で、先頃、2017年の日本公開も決まったばかりの話題作だ。
こちらはナショナル・ボード・オブ・レビューを初め、ワシントンDC、サンディエゴ、ヒューストン、シカゴの各地域の映画批評家協会、オンライン批評家協会で最優秀賞を獲得している。映画批評家から支持がとりわけ厚い。アワードの数だけを見ると、『ズートピア』を上回る。
日本からはロサンゼルス映画批評家協会賞で最優秀アニメーション賞に輝いた『君の名は。』が今後も期待される。2016年中の上映がロサンゼルスでの限定公開しかなかったことから知名度の不足が懸念されていたが、アジア各国での大ヒットもあり、米国のメディアで紹介されるケースが急増するなど関心が高まっている。1月のより幅広い公開で、鑑賞者も増えそうだ。
スタジオジブリが出資したマイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット監督の『レッドタートル ある島の物語』も、ロサンゼルス映画批評家協会賞では次点に挙げられ、サンフランシスコ映画批評家協会では最優秀賞となった。こちらも存在感をアピールしている。
2016年度 米国の主要な映画賞での長編アニメーション部門受賞作
ゴールデングローブ賞 『ズートピア』
ナショナル・ボード・オブ・レビュー 『Kubo and the Two Strings』
ニューヨーク映画批評家協会賞 『ズートピア』
ロサンゼルス映画批評家協会賞 『君の名は。』
映画批評家協会賞 『ズートピア』