プロダクション I.G、ウィットスタジオなどのアニメスタジオをグループに持つIGポートは、2022年7月14日に2022年5月期(21年6月~22年5月)の業績を発表した。連結売上高は118億7200万円と前年の99億3400万円より増加した。前年はわずかの100億円を下回ったが、いっきに100億円の大台を超えた。売上げは、映像制作、出版、版権の主要3事業全てで増加しており、同社が順調な成長軌道にあることを示している。
一方で営業利益は5億7300万円(17%減)、経常利益は5億7400万円(22.6%減)となった。映像制作事業が前期に続き赤字で4億200万円、大型作品の納品効果がなくなったことで赤字幅が広がったことが減益要因だ。
最終利益は500万円(99%減)と大きく減少したが、これは配信向けの作品で、ライセンス売上高と償却を一括して計上したためだ。一時的に税金費用が増加したことで当期純利益を押し下げたが、この結果翌期以降の税金費用が減少することになる。配信向けの作品は『海賊王女』と『ヴァンパイア・イン・ザ・ガーデン』を全額自社出資で製作している。
事業別では映像制作事業が売上高59億5600万円、営業損失が4億200万円。主要作品は『SPY × FAMILY』、『アオアシ』、『王様ランキング』、『銀河英雄伝説 Die Neue These 激突』、『プラチナエンド』、『攻殻機動隊 SAC_2045』、『ULTRAMAN』、『バブル BUBBLE』、『サイダーのように言葉が湧き上がる』、『DEEMO サクラノオト-あなたが奏でた音が、今も響く-』などだ。
版権事業は売上高は29億3200万円(37.6%増)、営業利益が5億9000万円(19.2%増)だ。売上が大きかった3タイトルのうち『海賊王女』と『ヴァンパイア・イン・ザ・ガーデン』は、全額自社出資のため制作相当分を版権売上高で計上しており、本来は映像制作事業の売上げに該当するとIGポートは説明する。2作品以外では「攻殻機動隊」シリーズ、「進撃の巨人」シリーズ、「ハイキュー!!」シリーズ、『GREAT PRETENDER』などが主力だ。
出版事業は変らず好調である。売上高は26億4600万円(22.5%増)、営業利益は5億4100万円(31.9%増)となった。電子書籍が好調で前年比40%増、売上比率は前年の54%から67%にさらに上昇している。
2023年5月期は、会社として大きな動きがある。8月30日付で主要子会社のプロダクション I.Gの代表取締役社長に取締役副社長の和田丈嗣氏が昇格、またシグナル・エムディでは社長に千野孝敏氏が就任した。
これに合わせて2023 年 5 月期から始まる中期経営計画を策定した。2025年5月期には連結売上高126億円、経常利益10億6900万円、当期純利益7億5600万円を計画する。売上の伸びは高くないが、経常利益で常に10億円以上、ROE 8%以上、配当市営25%目安と財務体質の優れた経営を目指している。
また全世界に向けて自社が直接商品・サービスを提供するダイレクトマーケティングを構築する。越境ECや電子書籍、NFTなどのデジタル商品のグローバルビジネス体制を目指す。