藤本タツキの原作マンガをもとに押山清高が監督した映画『ルックバック』に、米国でスポットライトが当たった。2024年12月20日、米国カリフォルニア州にある国際アニメーション協会(ASIFA)ハリウッド支部は、2024年の作品を対象にした第52回アニー賞の各部門ノミネートを発表した。
アワードの中でもとりわけ注目が高い長編アニメーション部門のうちインディーズ部門のノミネートに、『ルックバック』が挙げられた。北米では現地のGKIDS配給で10月4日に公開している。長さ58分の映画としては異例の最大531スクリーンでの上映、興行収入200万ドル(約3億円)のサプライズ、さらに作品への評価の高さで注目されたばかりだ。
アニー賞は1972年に、当時なかったアニメーション作品やスタッフを顕彰するアワードとしてスタートした。現在は32部門と複数の名誉賞を持ち、米国のアニメーション業界で最も重要な賞とされる一大イベントである。
なかでも長編部門は注目が高いが、作品の増加や性格の違いから2015年からは巨額の予算がかかる作品とインディーズの2部門に分割している。
『ルックバック』がノミネートされたのはこのうちインディーズ部門。ふたつに分けられたひとつだが、2024年は世界各国の傑作がひしめくかたちとなった。他の候補作品は昨年のアヌシー国際映画祭のクリスタル賞受賞後に世界の映画祭を席巻したフランスの『リンダはチキンがたべたい!』、そして本年のアヌシーのクリスタル賞でオーストラリアの『メモワール・オブ・ア・スネイル』、今年の映画祭、さらに米国の賞レースを席巻する『Flow』、渡辺謙が声の出演をした英国の『ケンスケの王国』、フランスのサイバーパンク『マーズ・エクスプレス』と、どの作品が受賞してもおかしくない。
これまで長編部門の候補作は5作品だったが、今年は6作品に増えている。それだけ傑作が多いことの反映だ。さらに6作品全てが北米以外からの作品というのも今年の特徴だ。
従来の長編部門も候補作は6作品と多い。こちらはハリウッドスタジオが巨額の予算で制作した作品が並ぶ。ディズニーからはピクサースタジオのヒット作『インサイド・ヘッド2』、ドリームワークスからは2作品で『野生の島のロズ』と『カンフー・パンダ 4 伝説のマスター降臨』だ。
Netflixオリジナル長編が3タイトルと半分を占めたのも注目だ。英国のロックスミス・アニメーションの『あの年のクリスマス』、アードマン・アニメーションの『ウォレスとグルミット 仕返しなんてコワくない!』、そして日本の円谷プロダクション製作で米国で制作された『Ultraman: Rising』だ。
作品別では『野生の島のロズ』が10部門でノミネート、『インサイド・ヘッド2』と『ウォレスとグルミット』が7部門と続く。
各賞の発表は2025年2月8日に開催される授賞式にて。話題作が集まった2024年だけに、賞の行方が大きな関心を集めそうだ。