AnimeJapan2024、パブリックもビジネスもコロナ禍前に全面復帰 

AnimeJapan2024

■凝った企業ブースが脱コロナ禍を演出

 2024年3月23日から26日まで、東京都内で日本アニメの総合イベント「AnimeJapan2024」が開催された。主催は一般社団法人アニメジャパン、日本の主要なアニメ企業が参加して協力する団体だ。あまたあるアニメイベントのなかでも、AnimeJapanがイベントの規模や華やかさで群を抜く理由でもある。
 年に一度の国内アニメ業界の一大イベントであるが、それでも2024年はこれまでにない盛り上がりと感じさせた。理由のひとつは会場面積の広さ。東京ビッグサイトの東展示場1ホールから8ホールまでを全て使用する。主催者が用意するAJステージだけでも44のプログラムが用意され、それに各社ブースで実施されるステージも含めると、23日、24日のパブリックデイ2日間に200を超えるライブ企画が行われた。
 また2020年以来開催されていなかったリアル会場を利用したビジネスデイと親子のための「ファミリーアニメフェスタ」などが戻ってきたのも大きかった。コロナ禍前にあった実施企画が、5年ぶりのフルラインナップになったのだ。

 しかし体感だけで、数字を見ないと見誤る。実際はAnimeJapan2024は、過去最大規模とは必ずしも言えない。東展示場の全ホール使用はコロナ禍前からあったし、総来場者数13万2557人は、15万人を超えた2018年をはじめ、2016年から2019年のレベルを超えていない。
 それでも「これまでにない」を感じさせた理由のひとつは、東京ビッグサイトで展開した大手企業ブースの巨大化と演出の派手さだ。たとえばアニプレックスはブース全体を湾曲にした巨大な映像パネルで覆っていた。KADOKAWAは過去最大面積のブースの出展だ。それぞれに凝っており、相当な予算がかけられていることが窺える。業績が好調とされるアニメ企業の現状を垣間見た気がした。

 ただ残念に感じた部分もあった。大企業が自社作品のアピールを競う華やかな演出をする一方で、新興企業やベンチャー企業、中小企業の存在感が薄れているように見えた。主催は壁沿いに巨大ブースを置き、それらを挟んでより小振りなブースを真ん中に置く、人の回遊を意識した導線などを試みている。しかしそうした企業・団体の出展自体が依然より減っており、たとえばアニメスタジオも一部の巨大制作会社以外はほとんど見られない。
 これはAnime Japanが、ユーザー向けの新作の宣伝の場として役割をより大きくしているためと思われる。作品でなくスタジオをアピールする、あるいはビジネスチャンスを探る場としての機能は薄れつつある。

 ファン向けとして、ひとつ興味深かった現象があった。かつては厳しく制限されていた会場内、ブースの撮影禁止がほぼなくなったことだ。これは昨年から強まっていたが、声優やアーティストがライブで出演するステージ以外で、撮影禁止の文字はほとんど見なかった。
 逆にユーザーがキャラクターや作品世界に入り込んだような絵づくりの出来るフォトスポットがあちらこちら作られている。むしろ積極的に写真を撮ってもらいSNSで拡散して欲しい、認知を挙げたいという企業側の思惑が伝わってくる。こうしたことからも、パブリックデイがプロモーションイベントであることが理解出来る。

■5年ぶりのリアル開催も、盛況だったビジネスデイ

 ビシネスの創出は、後半2日間、平日25日、26日のビジネスデイにもっぱら担わされているのだろう。そのビジネスデイは、今年は良いほうにサプライズがあった。
 ビジネスデイのリアル会場は20年、21年の開催中止、22年、23年のオンライン開催を経て、実に5年振りだ。正直当初は、企業がどれだけ参加するのか心配をしていた。
 ビジネスイベントは、国内外の他のイベントなどのビジネススケジュールとの調整もある。一旦休止してしまうとバイヤーなどの年間のスケジュールから外されてしまい、たとえ再開しても出展社や来場者を以前と同様に集めることが出来ないことが多い。新たにゼロからのスタートになる。
 実際に2023年10月に4年振りにリアル開催となった東京国際映画祭の併設見本市TIFFCOMは、2019年以前に比べると規模の縮小が目立っていた。

 ところがAnimeJapan2024のビジネスデイ1日目の午後に会場を訪れると、多くのビジネスパーソンで賑わっていた。ミーティングするテーブルも人で埋まっている。日本アニメの特化したマーケット、現状で日本アニメの海外からの引き合いが極めて強いことが理由かもしれない。
 さらに2024年は、会場の場所、設計もよかった。都心からやや離れた東京ビッグサイトでなく、都内の中心に位置する後楽園の東京ドームシティプリズムホールは、立地の良さに加えて、適度は広さと明確な導線は使い勝手もよく、参加者の評判も上々であった。
 ただし聞くところによれば、2024年の会場変更は東京ビッグサイトの会議場棟が確保出来なかったことが理由だという。2025年以降は、再び会場が変更になる可能性もありそうだ。

 AnimeJapanは、すでに2025年の開催日程も発表している。今年とほぼ同時期で、パブリックデイが2025年3月22日(土)と23日(日)の2日間、そしてビジネスデイ 2025年3月24日(月)・25日(火)、会場は東京ビッグサイトになる。
 パブリックデイを週末2日間、ビジネスデイをウィークデイ2日間と2024年を踏襲する。2024年の勢いをつなぐことで再び成功を目指すことになる。安定したイベントの運営は、国内アニメ文化の発展にさらに寄与することになりそうだ。

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