文化庁は2024年2月28日、第74回芸術選奨の文部科学大臣賞と新人賞の各受賞者を発表した。芸術選奨は様々な芸術分野において優れた業績を挙げた人物を顕彰するもので、12分野において文部科学大臣賞と新人賞を選出する。
アニメーション、マンガ、ゲームなどを含むメディア芸術部門も2008年より設けられている。近年はアニメーション監督などの授賞も増えている。
2008年からは、顕彰をするにあたりいくつかの大きな変更が行われている。ひとつはこれまで各分野1名づつであった大臣賞と新人賞1名が、各2名に倍増したことだ。また賞金は大臣賞が30万円から120万円に、新人賞が20万円から80万円に大幅に引き上げられている。
さらに本年からこれまで1分野であった美術がAとBに分割された。これによりこれまでメディア芸術に含まれていたメディアアートは、「美術B(建築・デザイン・写真・映像・メディアアート・その他の新傾向の作家)」に移された。
文化庁は2023年より文化庁芸術祭、文化庁メディア芸術祭、文化庁映画賞を廃止し、顕彰を芸術選奨に集約する方針とされている。今回の芸術選奨強化はその一環とみられる。
今年、メディア芸術分野で文部科学大臣賞に選ばれたのは、井上雄彦氏と田村由美氏といずれもマンガ家だった。田村由美氏は代表作として『ミステリと言う勿れ』が挙がっているが、井上雄彦氏は『THE FIRST SLAM DUNK』が言及されている。2022年に公開された本作でのアニメーション監督としての評価が大きかったと言えそうだ。
新人賞では、アニメーション作家の和田淳氏の名前が挙がった。すでに国内外で数多くの受賞を重ねるが、短編アニメーション作家の新人賞は初、文部科学大臣賞でも山村浩二氏のみなので快挙である。授賞理由は、テレビの短編シリーズ『いきものさん』の成果としている。アニメーション監督の新人賞は、これまで宮崎吾朗氏、細田守氏、長井龍雪氏、沖浦啓之氏らの授賞がある。
また今回、目を惹くのがメディア芸術新人賞のもうひとり、加藤隆生氏だ。名前を聞きなれない人も多いかもしれないが、脱出ゲームを数多く考案して、開発を手がけてきたSCRAPの代表取締役社長と分かれば思い当たる人もいるだろう。近年ますます盛り上がる体験型エンタテイントゲームが、いち早く顕彰の対象になったことが時代の変化を感じさせる。