日本作品が3年で連続短編グランプリ 折笠良「みじめな奇蹟」オタワ国際アニメーション映画祭

『みじめな奇蹟(Miserable Miracle)』

 世界三大国際アニメーション映画祭として知られるオタワ国際アニメーション映画祭で、日本映画の躍進が続いている。2023年9月20日から24日まで開催された今年の映画祭で、折笠良監督の『みじめな奇蹟(Miserable Miracle)』が短編部門のグランプリに輝いた。またVR部門では山村浩二監督の『耳に棲むもの(My Inner Ear Quartet)』が最優秀賞を受賞した。
 オタワは1976年にスタートした北米最大のアニメーション映画祭として、毎年大きな注目を浴びる。アヌシー国際アニメーション映画祭と較べて実験的、野心的な作品が選ばれて受賞する傾向が強い。2023年は期間中に、湯浅政明監督をゲストに招いた特集上映も行った。

 短編部門は映画祭のなかでもとりわけ関心が高い。今年は日本からはメインコンペティションだけでも、『みじめな奇蹟』を含めて『Baby Force』 (久保雄基)、『Our Pain』(林俊作)、 『Sewing Love』(XU Yuan)、『いきものさん:カメ』(和田淳)の5作品が出品されている。アヌシーよりも、日本作品にスポットがあたる傾向が強い。また日本作品の短編部門グランプは、2021年矢野ほなみ『骨噛み』、2022年和田敦『半島の鳥』と3年連続の快挙でもある。
 VR部門最優秀賞の山村浩二は、2007年に『カフカ 田舎医者』で短編グランプリを、2022年に『幾多の北』で長編グランプリを受賞している。『骨嚙み』ではプロデュースもするなど特に注目されるアニメーション作家だ。

 今回短編部門グランプリとなった折笠良は言葉をコンセプトにした作品で、世界的に注目を浴びている。『みじめな奇蹟』ではフランスの詩人アンリ・ミショーの同名の詩集からインスパイアされた短編作品とした。
 作品は日本のアニメーションプロジェクト会社ニューディアーとフランスのMiyu Productions、カナダ国立映画製作庁(NFB)による国際共同製作でもある。ニューディアーとMiyu Productionsは、いずれもインディーズ作品の国際共同製作に積極的で、2社は前年グランプリだった『半島の鳥』と同じ枠組みになる。今回の結果はそうした、新しいアニメーション制作の在り方も反映していそうだ。

オタワ国際アニメーション映画祭
https://www.animationfestival.ca/

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