2023年10月23日から11月1日まで開催する第36回東京国際映画祭が例年よりかなり規模を拡大することになりそうだ。9月27日、開幕からおよそ1ヵ月前のタイミングで東京日比谷ミッドタウンBASE Q HALLにて、映画祭のラインナップ発表記者会見が開催された。
この場で映画祭チェアマンの安藤裕康氏は、今年の上映作品数が219本と前年の174本から約25%増加することを明らかにした。また現時点で600人以上の海外ゲストの来日が決まっているという。オープニングパーティーなども復活し、コロナ禍のため2020年より滞ってきた国際交流機能の本格的な回復を目指す。
日本からは『正欲』(岸善幸監督)、『曖昧な楽園』(小辻陽平監督)、『わたくしどもは。』(富名哲也監督)が出品されるコンペティション部門は15作品。10本のワールドプレミアを含むこれらをヴィム・ヴェンダース監督ら審査員が選考する。
このほかにガラ・セレクション、ワールド・フォーカス、アジアの未来、Nippon Cinema Nowほか様々な部門から構成する。誕生120周年を記念した小津安二郎の監督作品35本を集めた特集上映は、今年の目玉だ。
上映本数が増加することで、上映劇場も拡大する。上映スケジュールには角川シネマ有楽町、シネスイッチ銀座、TOHOシネマズ日比谷、ヒューマントラストシネマ有楽町、ヒューリックホール東京、丸の内TOEIが会場としてラインナップされている。なかでも日比谷地区のランドマークであるTOHOシネマズで4スクリーンが活用されるのは注目だ。
国際交流機能の強化は上映だけでなく、ビジネス面でも図られる。映像コンテンツの国際見本市TIFFCOMが4年ぶりにリアルでの開催となる。開催期間は映画祭と重なる10月25日から27日の3日間、また会場は前回のリアル開催であった2019年の池袋から、より映画祭会場に近い港区竹芝地区の東京都立産業貿易センター浜松町館に移る。
期間中は従来の各国企業・団体のマーケット出展に加えて、日本のマンガや小説などの映像化権に特化した「Tokyo Story Market」、長編映画の資金調達のハブとなる「Tokyo Gap-Financing Market (TGFM)」も設ける。
さらにコンテンツ業界関連のセミナーも多数用意される予定だ。現時点で「『すずめの戸締まり』における海外展開: 製作会社と配給会社の関係性と可能性について」、「東映アニメーションの海外戦略について」が発表されている。
国際的な方向性をより強める部門のひとつが、アニメーションである。昨年までの「ジャパニーズアニメーション部門」を再編し、今年は「アニメーション部門」とする。大きな変化はこれまで日本作品に限られてきた上映作品に海外作品を含んだことだ。
上映作品は国内外の最新作を中心とした「ビジョンの交差点」がひとつ。全9作品のうち5作品が海外からとなる。アヌシー国際アニメーション映画祭長編部門クリスタル賞の『リンダはチキンがたべたい!』、同Contrechamp 部門最優秀賞『ロボット・ドリームズ』、中国の話題作『深海レストラン』など。また日本映画3作品から構成される「海外映画祭と監督」も海外と日本を意識したものである。さらに関連トークとして2つのシンポジウム「青年を描くアニメーション」と「アニメーション表現の可能性」を用意する。
アニメーション部門のプログラム・アドバイザーの藤津亮太氏は、今回の編成について現在「世界で様々な長編アニメーションを作るようになっている」ことを背景に挙げる。そのうえで「東京“から”でなく、東京“で”」といったアニメーション部門のコンセプトを説明した。
第36回東京国際映画祭
2023年10月23日(月)~11月1日(水)
https://www.tiff-jp.net
TIFFCOM2023
2023年 10 月25 日(水)~27 日(金)
https://www.tiffcom.jp
【アニメーション部門上映作品】
[ビジョンの交差点]
『アートカレッジ 1994』 監督:リウ・ジエン [刘健]
『BLUE GIANT』 監督:立川譲
『リンダはチキンがたべたい!』 監督:キアラ・マルタ、セバスチャン・ローデンバック
『北極百貨店のコンシェルジュさん』 監督:板津匡覧
『深海レストラン』 監督:ティエン・シャオポン [田晓鹏]
『駒田蒸留所へようこそ』 監督:吉原正行
『かがみの孤城』 監督:原恵一
『ロボット・ドリームズ』 監督:パブロ・ベルヘル
『トニーとシェリーと魔法の光』 監督:フィリップ・ポシヴァチュ
[アニメーション表現の可能性]
『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』 監督:片渕須直
『夜明け告げるルーのうた』 監督:湯浅政明
『音楽』 監督:岩井澤健治