ルーカスフィルム/インダストリアルマジックは、VFX/アニメーションのシンガポール・スタジオを閉鎖される方向だ。米国のエンタテインメント業界誌ヴァラエティは、2023年8月15日に、同社がシンガポールにある映像制作スタジオを閉鎖し、300名以上のスタッフを移動もしくは解雇すると報じた。
ルーカスフィルムは1971年に映画監督/プロデューサーのジョージ・ルーカスのクリエテイティブを実現するために設立された制作会社で、CGやVFX、アニメーションなどの映像を制作している。世界トップクラスの技術と高い評価を受けている。1977年に始まる「スターウォーズ」シリーズの制作で大きな役割を果たし、「インディ・ジョーンズ」シリーズも代表作のひとつ。2012年にウォルト・ディズニーに買収され、同グループの子会社になっている。
シンガポール・スタジオは2004年にまずアニメーションスタジオが設立され、2006年にインダストリアルマジックが続いた。当時は東南アジアに本格的なCGやVFXのスタジオが少ない時代であったこともあり、地域の映像制作を代表する存在となった。
同社にとっては、サンフランシスコにある本社以外での初のスタジオでもあった。その後、2012年にカナダ・バンクーバー、2014年にロンドン、2019年にシドニー、2012年にムンバイと海外スタジオを拡大する先駆けともなった。
現在の経済環境が閉鎖の理由とされているが、こうしたグローバル化の流れも影響していそうだ。映像産業の発展で、今は世界の多くの地域でクオリティの高い映像制作が可能になっている。
一方でシンガポールは不動産や人件費、生活費などで、現在、世界有数のコストの高い国になっている。現在の事業は、インドやカナダなどのスタジオで代替可能と判断があってもおかしくない。
もうひとつはウォルト・ディズニーの業績である。重点分野の配信事業で依然赤字が続いているのに加えて、映画や映像制作でも制作費の拡大や、興行の不振で収益回収が十分でない。ルーカスフィルムが制作した『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』も期待を大きく下回ったとされている。
ディズニーは業績改善のためコスト削減を迫られている。そのなかでルーカスフィルムのシンガポールスタジオの撤退が決断されたとみられる。