東宝は2023年1月12日に、23年2月期第3四半期決算を発表した。今期から「収益認識に関する会計基準」を適用したことから前年同期との増減を記載しなかったが、それでも売上高で6.6%増の1797億3800万円、営業利益で76億9100万円(27.3%増)とコロナ禍からの回復が進んでいることが分かる。経常利益は109億6700万円、当期純利益は69億7400万円。
映画事業、不動産事業は復調が明確である一方で、演劇事業は売上高こそ138億7500万円(16.6%増)と伸びたが営業利益は22億3300万円(9.0%)減と伸び悩んだ。全席完売であった『千と千尋の神隠し』などで一部新型コロナ感染症の影響による公演中止もあった。
映画事業では、製作・配給にあたる営業事業が売上げで前年同期並みの291億5400万円、利益は大幅な増加の109億700万円。このうち配給収入が195億4200万円と最も大きいが、劇場映画の国内配信も31億300万円と無視できない規模になっている。
劇場運営の興行は急回復した。売上高は527億6700万円、営業利益は58億6000万円で、自社配給作品以外に『ONE PIECE FILM RED』のヒットも貢献した。
映像事業は減収減益で、売上高は335億8100万円(7.4%減)、営業利益は62億5200万円(29.4%減)だ。中心となるアニメ製作では商品化、配信、パッケージ販売は『劇場版 呪術廻戦 0』が好調だったが、前年にあった『ウマ娘 プリティーダービー Season 2』のパッケージ販売の反動減をカバーしきれなかった。期間中のアニメコンテンツ利用収入は124億5600万円、パッケージ販売は45億2100万円だった。
第3四半期単独の主要な作品は、『僕のヒーローアカデミア』、『呪術廻戦』、『SPY×FAMILY』。『僕のヒーローアカデミア』と『SPY×FAMILY』は国内外の配信権収入が大きく、『呪術廻戦』は国内の商品化が活発だった。
東宝は引き続きアニメ事業の強化を打ち出している。期中には北米のTOHO INTERNATIONAL, INC.のジェネラルマネジャーとマーケティングディレクターに新たなエグゼクティブスタッフを決め、グローバルeコマース強化に乗り出した。またアニメスタジオTOHO animation STUDIOを連結子会社とした。
今後はこれまでのヒット作に加えて第4四半期では、アニメシリーズで『TRIGUN STAMPEDE』、『お兄ちゃんはおしまい!』、『お隣の天使様にいつの間にか駄目人間にされていた件』がスタート。またすでに製作発表されている『怪獣8号』、『葬送のフリーレン』が大きなタイトルになりそうだ。