映画大手の東宝は、連結子会社の東京現像所の全事業を終了することを決定した。2023年11月30日にフィルム現像や映像編集などの事業を終了する。東京現像所は1955年に東宝、大映、大沢商会などの出資によりフィルム現像の会社として設立された。フィルム現像需要が縮小するなかで近年は、デジタル技術による映像の合成や編集、劇場上映用デジタルデータ(DCP)の制作、さらに旧作映画の保存・修復といった映像アーカイブ事業にも進出していた。
一方で東宝は2021年9月に映像ポストプロダクションの大手IMAGICA エンタテインメントメディアサービスとDCP 事業に関する事業提携と新会社の設立で合意している。新会社は劇場向けにデジタル化した映像作品の配送サービスを主要業務とする。さらに今後は物理的な配送からデジタルでの配信に移行することを目指している。両社の合意により東京現像所は、グループ内で重複するDCP 事業を2023年3月31日に終了することを決定している。
東京現像所の事業終了は、これを受けてのものだ。DCP事業終了は東京現像所の業績に大きな影響を与えることから、今後の方向性について検討した。この結果、DCP 以外の事業のみで経営を維持することは難しいと判断したためだ。
DCP事業以外のうちアニメ・テレビ作品の編集とDIと呼ばれる映画のデジタルによる色彩調整などは、連結子会社のTOHO スタジオに移管されサービスを引き継ぐ。東宝グループの映像関連サービス事業が世田谷区成城の東宝スタジオに集約される。また映像デジタルアーカイブ事業は、新設される会社が引き継ぐ。
数々の傑作映画の映像実現に活躍してきた東京現像所だが、映画制作・流通の環境が変わるなかでその歴史の幕を閉じることになる。