デジタル作画で何が変わるのか? デジタルコンテンツエキスポで現場から報告

デジタル作画

日本のアニメーション制作フローがいま大きく変わろうとしている。フルCGアニメの普及、なかでもセルルックスタイルの存在感が急激に増している。さらに手描きアニメの作画にデジタルを取り入れるデジタル作画への注目が高まっている。紙と鉛筆を、タッチペンとタブレットに置き換えて、原画や動画を描くというものだ。
何かが変わり始めているというのはわかるが、実際に何がどうなって、どんな利点や問題点があるのか、関係者以外には分かり難い。そんなアニメーション制作の現場の変化をプロフェッシュナルが語るシンポジウムが、10月30日に東京・江東区の日本科学未来館で開催されたデジタルコンテンツEXPO 2016内で実施された。
「デジタル化によるアニメの可能性」とタイトルし、ウルトラスーパーピクチャーズのプロデューサー平澤直氏、オー・エル・エムのアニメーションプロデューサー加藤浩幸氏が登壇。メディアコンテンツ研究家の黒川文雄氏がモデレーターとして話題を引きだした。

トークはまず平澤氏がフローチャートを用いて、制作現場の変化を解説するところからスタートした。平澤氏によれば、これまでのデジタル化は、撮影や編集、音響といったポストプロダクションの分野に集中している。手塗りのセル画はデジタル彩色になり、撮影機がPC内で使用するソフトのAfter Effectsに置き換わるといった具合だ。デジタル化の利点は、例えば重ねる画像の枚数や色の数が増えるなど表現の幅が広がったことだという。

一方で、キャラクターの動きなどは、フルCGが一部であるとはいえ、現在は、アニメーターが手で絵を描く、いわゆる手描きアニメが主流だ。しかも、アニメファンの多くが、いまでもそうした表現を求めている。そこで注目されるのが、デジタル作画である。加藤氏が、このデジタル作画の現在を解説する。
加藤氏が所属するオー・エル・エムは、『ポケットモンスター』や『妖怪ウォッチ』などのアニメーション制作でよく知られている。また『パックワールド』や『ルドルフとイッパイアッテナ』といったフルCGも制作する日本でも珍しい手描きとCGをほぼ同じだけ扱う制作会社だ。
加藤氏は社内に設けられたデジタル作画部で、新しいアニメの作画、レイアウト・原画・動画のデジタル化に挑んでいる。デジタル作画部には25名のスタッフがおり、さらに2017年には新卒社員8名を採用するという。想像以上の大所帯にまず驚かされた。実際にテレビアニメ『ポケットモンスター XY&Z』では、番組のミニコーナーを使い、完全ペーパーレスの試みを実現している。

傍目から見れば、デジタル化は効率アップにつながると思える。しかし加藤氏によれば、必ずしもそうではない。慣れれば紙と変わらないスピードで描けるが、それは人次第だと言う。例えば、デジタル化でより細かな描き込みが可能になるため、絵にこだわる人は仕事が却って遅くなることもある。
また手描きのアニメではどのスタジオに行っても仕事のフローは同じだが、デジタルでは必ずしもそうではない。そこで今後はスタジオの垣根を越えたルール決めが重要だと指摘する。オー・エル・エムはグラフィニカ、シグナルMDといったデジタル作画を積極的に導入するスタジオとの共同作業として、デジタル作画の新作『ピカイア!』を制作している。共通言語の導入への試みと言うわけだ。

ポストプロダクションから、さらにプロダクション(作画、背景美術)でもデジタル化が進むことで、今後アニメーション制作はどう変わるのだろうか?
平澤氏は、工程間の物理的な制約がなくなることの大きさを指摘する。これまで一方向の流れであった作業が、前に戻ったりとの行き来が可能になり、工程を繰りかえせる様になる。ポストプロダクションからプロダクション、さらにプリプロダクションまでデジタル化が進めば、シナリオから絵コンテの作成が容易になることで、隣接業界からの参入が増えるのではと面白い予測を披露した。
一方、加藤氏は今後はスペシャリストのなかのジェネラリストが求められるのではと話す。いまのアニメ業界はスペシャリストから成り立つが、CGではジェネラリストから始まり、より専門性を高めていくとの可能性だ。
トークは1時間と限られていたが、初めから終わりまで情報がぎっしりとなった。濃いめの話であるにも関わらず、平易な言葉での3氏のトークは、アニメーション制作に詳しくない人でも十分理解できたに違いない。

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