アニメスタジオのトリガーが、劇場アニメ『リトルウィッチアカデミア』の絵コンテや原画・動画などの制作素材データ一式を研究資料として国立情報学研究所に提供する。国立情報学研究所は情報学分野にける研究の推進をしている。
トリガーは2011年に設立された新鋭のアニメスタジオで、『キルラキル』や『プロメア』など個性豊かな作画や映像、メリハリのある演出などで人気だ。『リトルウィッチアカデミア』は2013年に文化庁の若手アニメーター育成プロジェクトの参加作品として制作、2015年に劇場版が公開された。
トリガーから提供されたデータは、アニメーション技術の学術的研究のために用いる。画像自動生成(自動フレーム補完、超解像度技術、3Dモデル自動生成等)や制作進行の効率化、データ管理構造などの開発に用いられることが期待されている。
3月15日からデータセット共同利用研究開発センターが運営する情報学研究データリポジトリを通じて、研究者への提供を開始した。3月16日にはコミック工学研究会で研究者向けの紹介をする。
今回のデータには劇場アニメ『リトルウィッチアカデミア』の制作で使用したシナリオ、絵コンテ、美術、設定、色彩、作画383カット分(カット袋・タイムシート・レイアウト・原画)、仕上げ397カット分)が含まれる。ひとつの作品の制作素材がまるまる完全な状態でセット化されている。
通常のアニメは製作委員会や共同出資で作られることが多く、作品の権利は複雑に分散している。さらに中間素材と呼ばれる制作過程で生じたものは、完成作品と違い権利と所有の帰属が曖昧なことも多い。このため学術資料として制作素材を扱いたくても、ほとんど出来ないのが現状だった。
例えばAIに学習させたディープラーニングによるアニメ映像生成技術の開発を考えたとしても、ディープラーニングの学習に必要な商業アニメの素材がない。
今回提供する『リトルウィッチアカデミア』は、文化庁の若プロジェクトの参加作品でトリガーが制作だけでなく、原作も含めた全ての権利・素材を保有している。そうしたことからこの取り組みが実現した。コミック工学研究会では、研究コミュニティで自由に使えるアニメ制作の中間素材データセットはこれまでに例がなく、貴重なものとしている。
トリガー
http://www.st-trigger.co.jp/
大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立情報学研究所
https://www.nii.ac.jp/
情報学研究データリポジトリ トリガーデータセット紹介ページ
https://www.nii.ac.jp/dsc/idr/trigger/