■海外版権、国内配信販売が想定を上回る
大手アニメ企業の東映アニメーションの業績がコロナ禍を潜り抜けて、再び上昇軌道にのっている。2022年1月27日に22年3月期第3四半期の決算を発表したが、好調な数字を背景に合わせて通期業績予想を上方修正した。
これまで510億円としていた連結売上高予想を551億円に変更、営業利益145億円、経常利益148億円、当期純利益102億円をそれぞれ168億円、173億円、122億円に引き上げた。これまで通期売上高が最も高かったのは2019年3月期の557億円、それが21年3月期には新型コロナ感染症の影響もあり515億9500万円まで縮小していた。しかし22年3月期は、いっきに過去最高水準まで切り返す。
修正の理由は海外事業と国内での配信権販売である。欧米と中国での「ドラゴンボール」「ワンピース」「デジモンアドベンチャー」の商品化権とゲーム化権が想定を上回った。また国内では配信向けの権利販売が好調だった。
■国内版権は低調、海外版権の伸びが大きい
第3四半期までの売上高利益は、前年同期比二桁増である。連結売上高は425億2200万円(13.0%増)、営業利益は143億3100万円(20.4%増)、経常利益は144億7800万円(19.0%増)、当期純利益は100億5000万円(16.5%増)だ。
事業別では劇場アニメが前年同期に比べて本数が少なかったことから減収、逆にテレビアニメでは放映本数の増加で売上げを伸ばした。海外向けの映像販売はアジア向け販売が好調だったが、前年あったサウジアラビア向けの劇場作品の反動もあり前年並みにとどまった。
版権事業は海外が好調だ。国内版権は伸び悩んでおり、第3四半期までの87億6900万円は過去5年間で最も低い水準。海外版権の好調がこれをカバーするかたちで、こちらは154億4100万円で前年比33%増と過去最高水準だ。
こうしたことから売上全体に占める海外比率は269億6600万円と全体の6割を超えた。中国を含むアジアが好調で売り上げも最も多いが、北米、欧州も堅調で各地域で好業績を維持している。
■来期の鍵を握る大型映画3本「ドラゴンボール」「ワンピース」「スラムダンク」
今期の決算の行方が見えてきた一方で、今後は来期以降の動向に関心が集まりそうだ。鍵となるのは引き続き海外向け事業が維持できるかで、特に海外最大市場である中国市場の動向を注意深く見守りたいところだ。
一方で23年3月期は国内では大作映画が重なり、この動向が重みを増す。映画『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』が4月22日、『ONE PIECE FILM RED』が8月6日と二大タイトルが全国公開となる。映画と連動した作品の盛り上げが期待される。さらに国内外で長年人気の高いスラムダンクの新作映画が22年秋に公開になる。映画をきっかけに作品のリブートを狙うことになりそうだ。