出版・アニメ好調 KADOKAWA第1Q増収増益、アニメ事業強化打ち出す

ファイナンス決算

 エンタメ大手KADOKAWAが2022年3月期で好調なスタートを切った。7月30日に発表された第1四半期決算で増収増益となり、特に利益では約60%の高い伸びを見せた。
 連結売上高は520億3400万円(10.7%増)、営業利益は58億6900万円(63.9%増)、経常利益は61億4400万円(59.5%増)、当期純利益は40億2300万円(63.9%増)になる。売上面ではアニメを含む映像事業、利益では電子書籍が好調な出版事業は急伸した。売上の落ち込みで赤字転落したゲーム事業をカバーした。

■海外出版事業も好調、米国YenPressやBOOK☆WALKER
 売上が最も大きいのは、出版事業で321億2900万円(前年同期比9.8%増)。紙書籍が9.6%増に対して、電子書籍19.6%増になっている。また紙書籍では北米の翻訳出版子会社YenPressのマンガとラノベが高成長となっている。北米市場のマンガ出版拡大を背景に、業績を拡大しているようだ。主力タイトルはマンガが『異世界居酒屋「のぶ」』、一般書籍で『魔力の胎動』、児童書で『パンどろぼう』が挙げられている。
 電子書籍は外部販売、自社ストア「BOOK☆WALKER」も好調で、さらにここでも海外売上が大きく伸びている。海外向けの「BOOK☆WALKER」は、前年同期比49%増だ。
 この結果営業利益は53億8700万円(151.3%増)となった。電子書籍の収益性の高さもあり、前年比で2.5倍もの水準となった。

■『蜘蛛ですが、なにか?』、『Re:ゼロ』が牽引、映像事業
 映像事業の売上高は89億300万円(59.2%増)、営業利益は10億3800万円と、前年の営業損失から黒字に浮上した。特にアニメ事業が好調で、『蜘蛛ですが、なにか?』、『聖女の魔力は万能です』や『Re:ゼロから始める異世界生活』が主力となった。ここでも海外事業が好調で、アニメ海外事業は前年同期比79%増にもなる。
 実写映画では『ヤクザと家族』よ『ファーストラヴ』が貢献した。第2四半期以降は、『竜とそばかすの姫』や『妖怪大戦争 ガーディアンズ』、『鹿の王 ユナと約束の旅』といった大型タイトルの行方が業績を左右しそうだ。

 ゲーム事業は大きな新作、ヒット作がなく減収減益。売上高は18億7500万円(56.8%減)、また営業損失に転落し1億1600万円のマイナスになった。
 ニコニコを中心とするWebサービス事業は売上高53億7800万円(2.8%増)、営業利益は5億9900万円(15.2%増)である。「ニコニコ」のプレミアム会員はさらに減少し、21年6月末には148万人となったが都度課金強化で売上の拡大を図っている。

■アニメ事業強化を打ち出す
 今回の決算で注目されるのは、アニメ事業の強化を積極的に打ち出したことだ。「アニメ事業
ビジョン」も発表された。
このビジョンでは、

・自社IPのアニメ化の加速
・自社制作の拡大、世界が求めるアニメIP創出
・IP数と制作の質の両面からアニメ産業をリードするオンリーワンカンパニー

を掲げている。

 これを前提としてこれまでのアニメスタジオENGIの設立、キナマシトラスへの出資に続き、2021年6月のStudio KADANの設立をトピックとしている。CGを含めた多様なジャンルで、自社制作する体制強化を築くものだ。
 出資アニメ作品も増加しており、第1四半期だけで12作品(テレビシリーズ11本、劇場映画1本)と前年の7作品から急増した。好調なアニメ事業をさらに加速化する狙いがあるとみられる。

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