北米のアニメーション映画配給のGKIDSが、日本の劇場映画の権利獲得にさらに積極的になっている。2020年7月7日にスタジオジブリの新作で宮崎吾朗監督の『アーヤと魔女』の北米配給権の獲得を発表した。6月25日に湯浅政明監督の『犬王』の北米配給も発表したばかりで、相次いで話題作を手がけることになる。
日本の劇場アニメの海外配給は、かつては作品完成後、日本公開後の評判を確認した後に購入されることが多かった。しかし近年は、評価の定まった監督やスタジオの作品を公開前、完成前から権利を獲得するケースが増えている。
今回の『アーヤと魔女』は2020年冬とNHKでの放送は半年先、『犬王』は2021年公開と一年先である。交渉期間も考えれば、制作のかなり早い段階から作品に手をつけていたかたちだ。
『アーヤと魔女』は、GKIDSが現在、スタジオジブリのほとんどの作品の北米配給権を持っていることに理由があるだろう。湯浅政明も『マインド・ゲーム』を始め長編映画のほとんどを取り扱うGKIDSが力を入れる監督のひとりだ。
GKIDSは、ヨーロッパ映画や北米のインディーズ映画も広く取り扱うが、近年は日本の長編アニメが重点分野になっており、配給権の獲得も多い。またジャンルも広がっている。
コアなアニメファンから支持された『プロメア』や長年の人気キャラクターのフランチャイズである『ルパン三世 THE FIRST』は、従来であれば取り扱わなかったジャンルだ。シュールでコメディタッチの『音楽』も思い切った冒険だ。
GKIDSの関心は、さらに旧作劇場アニメにも広がる。2019年には今敏監督の『東京ゴッドファーザー』や原恵一監督の『河童のクゥと夏休み』、スタジオ4℃のオムニバス『Genius Party』といった作品の権利も獲得している。
GKIDSの積極的な劇場上映は、これまでより幅広い日本アニメ映画が北米で受け入れられるようになってきた理由のひとつだろう。同時にDVDやBlu‐rayの売上が依然より減少しているなかで、日本アニメを多く取り扱うのは、劇場興行を含めた収益が取れる、人気の高いジャンルと判断しているともいえる。
GKIDSが取り扱う新たな作品がどの程度ビジネスとして成功するのかは、今後の北米における日本アニメの動向としても見逃せない。