新千歳のグランプリ 長編は「失くした体」、短編に「Acid Rain」

新千歳空港国際アニメーション映画祭

 2019年11月1日から4日まで4日間にわたり北海道の第6回新千歳空港国際アニメーション映画祭が開催され、大盛況の中で幕を閉じた。イベントの目玉となったのは、世界各国から集まり、審査委員によりアワードが選ばれるコンペティションだ。
 2019年は世界84ヵ国・地域から2191本の応募があり、53作品が期間中に上映された。最終日の授賞式にて、この中から各アワードの受賞者・受賞作品が発表された。

 長編部門のグランプリは、フランスのジェレミー・クラパン監督の『失くした体』に輝いた。本作は今年のカンヌ映画祭批評家週間でワールドプレミアとなり、アニメーション映画としては初めてグランプリを受賞した話題作である。その後はアヌシー国際アニメーション映画祭、米国のAnimetion is Film映画祭で立て続けにグランプリを受賞している。新千歳はアニメーション映画祭としては3つめのグランプリとなる。
 クラパン監督は本作がフランス公開直前ということで、会場には訪れることが出来なかった。しかし、新千歳に行くことが出来なくて大変残念との言葉と、喜びに満ちたビデオメッセージを届けた。

 『失くした体』は切断された手が、自らの本体を探してパリの街を彷徨うという奇妙なストーリー。そこから主人公の過去と現在が描かれる。
 審査員は選考理由として「そこで描かれた希望は、アニメーションというかたちを取ったフィクションならではの想像力の賜物であり、それが未だかつてない高い技術レベルで表現されていました」と述べている。
 カンヌ上映後、Netflixが世界配信権を獲得。米国アカデミー賞の有力候補ともされている。11月末には日本でも配信視聴が可能になる。

 長編部門の審査員特別賞は、ラトビアのGints Zilbalodis監督の『AWAY』。4年半をかけて企画・ストーリー・作画はもちろん音楽まで一人で作り上げたという作品だ。
 未知なるモンスターに追われ続ける少年を、静かなタッチで描く。空や水、大気の美しい表現が持ち味となっている。

 長編部門は昨年初開催で、今年2度目。誕生したばかりであるが、今回は32ヶ国・地域から50作品ものエントリーがあり、5作品がコンペインした。先日オタワ国際アニメーション映画祭でグランプリを獲ったばかりの『音楽』もそのひとつだ。
 コンペ作品は、いずれも世界トップクラスである。これは2013年から続く短編部門のレベルの高さが評価された結果と言っていいだろう。

 その短編グランプリは、ポーランドのトマーシュ・ポパクル監督の『Acid Rain』。ポパクル監督は2013年第1回の『Ziegenort』でもグランプリを獲っている。今回で2度目にあたる。
「新千歳とは特別なつながりがあるようです。私にとっても一番のお気に入りの映画祭です」と喜びを語った。
 このほか新人賞に『Now 2』Kevin Eskew(米国)、審査員特別賞に『Splash』Shen Jie(中国)、『脳の上』野々上聡人(日本)、『Winter in the Rainforest』Anu-Laura Tuttelberg(エストニア、メキシコ、リトアニア)の3作品。日本グランプリには『向かうねずみ』の築地のはらと、国際色豊かな受賞作品となった。

 新千歳空港国際アニメーション映画祭は、昨年より長編部門のほかに学生部門もスタート。幅広い作品が集める総合映画祭に進化している。
 今年は日本作品のアワードでの活躍が目立っている。これは日本コンペティションが用意されていることもあり、日本映画が多く上映されることとも無関係でないだろう。加えて様々な企業の協力もあり、アワードが多いことも理由だ。
 海外の映画祭では、特に短編で日本作品にスポットが当たることは限られがちだ。上映と受賞作が多くなるのは、日本で開催する国際映画祭ならと言っていいだろう。とりわけ新千歳は海外のアーティストの参加も多い。そうした人たちに日本のアニメーションを知ってもらうよい機会にもなっているはずだ。映画祭は日本と海外の交流と、日本のアニメーション発展にも大きく貢献している。

第6回 新千歳空港国際アニメーション映画祭
http://airport-anifes.jp/

【短編アニメーション部門】
■グランプリ
『Acid Rain』 Tomek Popakul(ポーランド)
■日本グランプリ
『向かうねずみ』 築地のはら
■新人賞
『Now 2』 Kevin Eskew(米国)
■審査員特別賞
『Splash』 Shen Jie(中国)
『脳の上』 野々上聡人(日本)
『Winter in the Rainforest』 Anu-Laura Tuttelberg(エストニア、メキシコ、リトアニア)

【長編アニメーション部門】
■グランプリ
『失くした体』 Jeremy Clapin(フランス)
■ 審査員特別賞
『AWAY』 Gints Zilbalodis (ラトビア)

【学生部門】
■グランプリ
『After』 Matous Valchar (チェコ)
■審査員特別賞
『Survival HK』 Louise Pau(香港・米国)
■スペシャルメンション
『Applesauce』 Alexander Gratzer(オーストリア)

■キッズ賞
『パッヘルベルのカノン』 大西景太(日本)

■ベストミュージックアニメーション
『来生たかお“マイ・ラグジュアリー・ナイト”』 水尻自子(日本)

■観客賞
『ある日本の絵描き少年』 川尻将由(日本)

【企業賞】
■ロイズ賞
『ウォーター・ベイビー』  Kim Sang-nahm(韓国)
■ISHIYA賞
『秋の最後の日』  Marjolaine Perreten(スイス)
■サッポロビール賞
『Our House』 Fábián Balogh(ハンガリー)
■DNP 大日本印刷賞
『ある日本の絵描き少年』 川尻将由(日本)
■北海道銀行賞
『LOCOMOTOR』 金子勲矩(日本)
■北洋銀行賞
『[Gif] “Citizen Hippo” シリーズ』 Xiao Hong(中国)
■北海道コカ・コーラ賞
『Do-ji-le?』 Tzu-Hsin (Cindy) Yang(台湾・アメリカ)
■外務大臣賞
『Mother and Milk』 Ami Lindholm(フィンランド)
■観光庁長官賞
『CASTLE』 宮嶋龍太郎(日本)
■北海道知事賞
『HAZY』 小川陽(日本)
■新千歳空港賞
『四月』 Zhou Xiaolin(日本)

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