エンタメ大手のKADOKAWAの業績が急回復している。8月8日に発表した2020年第1四半期で利益面の数字が急伸した。4月から6月までの連結売上高は497億4500万円(0.2%増)とほぼ前年並みだったが、営業利益が34億7100万円と前年同期の8.7倍にもなった。経常利益は36億4300万円(227.7%増)、当期純利益は26億300万円(606.5%増)だ。
赤字部門であったWebサービス事業で構造改革効果があり黒字転換したほか、電子書籍、そしてゲーム・アニメの海外向けロイヤリティ販売が好調だった。通期決算の見通しは据え置いたが、2020年3月期は明るい展望になりそうだ。
利益の伸びが大きかったのは、映像・ゲーム事業である。売上高は121億4700万円(8.9%増)で営業利益は22億8200万円(160.1%増)になった。
ゲームとアニメ双方で海外事業の好調が大きかった。ゲームでは『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE』が世界累計380万本の出荷となり、海外からのロイヤリティが想定を上回った。アニメのヒット作は『オーバーロード3』と『盾の勇者の成り上がり』、北米と中国向けのロイヤリティ販売が好調だった。
出版事業の利益も伸びている。売上高は275億8200万円(3.8%増)、営業利益は19億1000万円(84.2%増)だ。
主力タイトルはマンガでは『ダンジョン飯』、ライトノベルでは『魔法科高校の劣等生』、文庫では『三鬼 三島屋変調百物語四之続』、一般書籍では『ウチら棺桶まで永遠のランウェイ』。さらにシリーズもので「Fate」、「文豪ストレイドッグス」、「賢者の孫」が好調だった。
第1四半期の業績に反映されていないが、第2四半期以降は、『天気の子』関連書籍が牽引しそうだ。『小説 天気の子』はすでに初版50万部、重版12万部の累計62万部になっている。この他つばさ文庫版、『新海誠監督作品 天気の子 公式ビジュアルガイド』を刊行している。2017年3月期の『君の名は。』に続くヒットが期待される。
また電子書籍・電子雑誌の成長が著しく、第1四半期の売上は前年同期比で31%増となった。国内全体の電子書籍市場の成長もある。あいかし2019年1月から6月の国内全体の電子書籍市場は22%増、これをさらに上回るペースで拡大している。
これまで先行投資の負担が重かった埼玉県・所沢の製造・物流拠点は、工場建設とシステム整備が予定どおり進捗しているという。本年度中にフル活動を目指している。
Webサービス事業は、構造改革の成果が明白だ。売上高は3.5%減の65億3800万円となったが、営業利益は5億3400万円と前年の4億1100万円から一気に浮上した。コスト削減効果が大きい。期間中にスマホアプリゲームの一部撤退、Vtuberアニメ、ニュースメディア、研究部門、関連会社の整理などを行った。niconico事業もコストを見直し、イベント事業のニコファーレとニコニコ本社を閉鎖し、Hareza池袋に集約を図る。これらの結果四半期で14億円のコストの削減を実現した。
配信事業のニコニコプレミアム会員は3ヵ月で180万人から175万人に減少したが、「ニコニコチャンネル」の月額会員数の伸びでそれをカバーする。会員数は初めて100 万人を超え、年間課金額 55 億円を超える見通しである。ビジネスモデルの組み替え目指すかたちだ。