「少年ジャンプ」の人気作が、日本のリリースと同時に海外では無料で読むことができる。そんな大胆なプロジェクトが、この12月から始まる。米国の日本マンガ出版社Viz Mediaは少年ジャンプの英語版「Weekly Shonen Jump」を全面刷新し、2018年12月17日より新たに「Shonen Jump」をスタートすると発表した。
「Weekly Shonen Jump」は年間26ドルで毎週最新のマンガを読めるのを特長としていたが、「Shonen Jump」では連載作品の最新エピソードの直近3話分を無料で読むことができる。しかもアップは日本の雑誌発売と同時だ。さらに月1.99ドルを支払うと1万話以上ある過去作品が読み放題になる。米国、カナダ、イギリス、アイルランド、ニュージランド、オーストラリア、南アフリカ、インド、フィリピン、シンガポールで利用できる
英語版「少年ジャンプ」は2002年に紙雑誌として北米で発売されたのがスタートだ。小学館、集英社、Shoproが出資する米国法人Viz Mediaが発売する。16年の歴史を誇るが、その歴史は平坦でなかった。紙雑誌の販売数の減少、流通にかかるコストの大きさを理由に2012年にデジタル版「Weekly Shonen Jump Alpha」に全面移行、さらにその後名称を変更して現在の「Weekly Shonen Jump」に至る。。
この間連載作品に「少年ジャンプ」だけでなく「ジャンプスクエア」や「Vジャンプ」を含めたり、過去作を掲載するなど様々挑戦をしてきた。しかし最新作を無料で開放するのは、初めての試みだ。
最新エピソードがリリースと同時に無料で読めるのは、日本のファンから見ると羨ましい限りとなる。これにはいくつか理由がある。
VIZ Mediaは新プラン導入の目的について、海賊版でなく正規配信できちんとしたかたちでファンに作品を届けたいとする。インターネット上には、英語をはじめとする各国語の違法にアップロードされた日本マンガの最新作が溢れている。これを利用するファンは少なくない。その取締りには膨大なコストがかかり、対策効果を得られないことも少なくない。
そこで正規版を日本でのリリースと同時に、かつ無料で提供するという究極的な対抗手段にでる。少なくともジャンプ作品については、海賊版業者はほとんど対抗する手段をなくす。
大胆な試みに見えるが、最新話を無料で読ませて過去作品を有料にするのは、日本国内でもデジタルマガジン「少年ジャンプ+」で行っている。これを英語圏のビジネスに応用したかたちだ。定額課金でコンテンツを利用し放題は、NetflixやSpotifyといった映像や音楽では一般的なビジネスで、マンガでこれに挑む。
しかし最新作無料、ライブラリーも月約2ドルは破格の金額で、その採算性が気になる。ネット上では作品の拡散とブランド認知の向上を目指し、単行本の売上で回収することになりそうだ。さらに「少年ジャンプ」作品は、アニメ化やキャラクター商品化などでビジネスを大きくする作品が多い。そうした効果を狙う部分も大きいだろう。