インターネットでデジタルマンガに関する事業を拡大することで、近年、出版業界で注目を集めているのがメディアドゥホールディングスである。その事業はデジタルコミックのアグリゲーション(取次)から始まり、カラーリングや情報サイト、無料配信ポータルと幅広い領域に及ぶ。破竹の勢いで成長を続けてきたが、しかしその全ての投資が順調と言えないようだ。
2018年10月10日、メディアドゥホールディングスは、これまで投資した企業のうちCreatubblesPte.とインターネット総合研究所の2社について、投資有価証券評価損を計上すると発表した。評価損は両社を併せて9億8100万円となる。
投資有価証券評価損の計上により、2019年2月期の通期連結決算の業績見通しを下方修正する。売上高、営業利益、経常利益は変わらないが、これまで4億5000万円としていた当期純利益が5億3100万円の純損失に変更される。最終損失という厳しい予想である。
CreatubblesPte.は、シンガポールに本拠を持つ子ども向けのSNSを運営している。メディアドゥホールディングスは2016年8月に、子ども向けの安全なSNSは今後成長が見込まれるとして、資本業務提携をした。Creatubblesの日本総代理店になることでの協業を期待した。
同社の発行済株式の14.17%を約4億9700万円で取得、さらに転換社債を約9億4200万円で取得し、最大32.33%の株式を保有できるといったものだ。
しかし今回の発表では、Creatubblesはサービスの認知度を十分に高めることが出来ず、当初計画した業務拡大が遅れている。将来の回収の見通しから株式価値を見直し、4億6600万円の損失を計上した。
一方、インターネット総合研究所は、2017年5月に資本業務提携を結んだ。インターネット総合研究所の発行済株式の20.1%を8億7500万円で、同グループ会社のAIスクエアの株式の20.1%を1億9500万円で取得している。総投資額は10億7000万円となる。同社の持つAIを活用とした自動翻訳技術、セキュリティ技術に期待をした。
しかし8月に同社のイスラエル法人がテルアビブ市場に上場したところ、その時価総額にメディアドゥの投資時の評価額と乖離が見られたことから評価損を計上することになった。評価損失は5億1000万円になる。
メディアドゥは、今回の評価損計上を受けて、今後は投資方針や投資基準を見直すとしている。また子会社や投資先への人材を増強することで管理体制を強化する。
同社の投資は出版デジタル機構などの成功例もある。しかし、これまでのような積極的なM&A姿勢は、今後は弱まる可能性もありそうだ。