米国の映画芸術科学アカデミーは、2018年6月25日に新たに国内外の映画人928名に新会員への招待をだすことを明らかにした。日本からも約10名が、この中に含まれた。
なかでも細田守監督、片渕須直監督、新海誠監督と日本を代表する長編アニメーションの映画監督が3人いるのが目を惹いた。さらに短編アニメーション『Neagative Space』共同監督でアカデミー賞にノミネートされた桑原かおる監督、アニメ映画・番組の劇伴でもお馴染みの菅野よう子さんとアニメーション関係者の名前が多く挙がった。
映画芸術科学アカデミーは、米国の映画文化発展を目的に設立されている。映画業界の同業者団体で、毎年春に発表する米国アカデミー賞で広く知られている。映画芸術科学アカデミー会員は、アカデミー賞選出の投票権を持つことになる。
現在のアカデミーの会員は7000名弱。会員の招待人数は2016年683名、2017年774名といずれも過去最高であった。この2年間で北野武監督、是枝裕和監督、黒沢清監督、河瀬直美監督、三池崇史監督、種田陽平さん、菊地凛子さん、そしてアニメ関係では『思い出のマーニー』の米林宏昌監督、アニメーション作家の山村浩二監督、『ダム・キーパー』の堤大介監督、プロデューサーの西村義明さんら多くの日本人が加わった。
2018年の招待者人数は、2016年、2017年をさらに上回り、史上空前の規模となった。これは現在、米国の映画業界で問題になっている多様性の議論が反映している。これまでのメンバーは白人男性が多く、社会状況を反映していないとの指摘だ。そこで女性、そして非白人系の会員を増やすことでバランスを取ろうというわけだ。
日本人への招待の増加の背景にもこうした理由もありそうだ。その際に映画祭や劇場で世界的にみられる機会が増えているアニメーションのスタッフが多く候補に挙がるというわけだ。
映画芸術科学アカデミーは全体で大きな組織を構成するだけでなく、俳優や監督、プロデューサー、音楽など17の分科会が設けられている。2018年は「短編映画/長編アニメーション」分科会で106人を招待している。細田守、片渕須直、新海誠、桑畑かほるの各監督はここに含まれる。
短編とアニメーションが同居する分科会は、やや奇妙に見える。これは米国アカデミー賞に長編アニメーション部門が設けられたのが2001年と比較的歴史が浅いことが理由だ。それまでは短編映画部門の中に実写映画とアニメーション映画のふたつが設けられていた。長編アニメーションはそこから分離したためだ。
招待リストに載った細田守監督の代表作は『バケモノの子』と『時をかける少女』。片渕須直監督は『この世界の片隅に』と『マイマイ新子と千年の魔法』、新海誠監督は『君の名は。』と『星を追う子ども』である。いずれもアカデミー賞の受賞やノミネートはないが、作品への評価は高い。
音楽分科会での招待となった菅野よう子さんは、『海街diary』と並んでアニメ作品の『マクロスプラス』を代表作としている。菅野さんは『カウボーイビバップ』、『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』『∀ガンダム』なども手がけている。
日本からはこの他に、実写映画の園子温監督、平柳敦子監督。俳優のイッセー尾形さん、美術デザイナーの三ツ松けいこさん、メイクアップアーティストの渡辺典子さんらが選ばれている。台湾で活躍する俳優の金城武さん、日系人俳優の田川洋行さんも日本の関係者と言っていいだろう。