4月25日、朝日新聞社は第22回手塚治虫文化賞の大賞に野田サトル氏の『ゴールデンカムイ』に決定したと発表した。手塚治虫文化賞は、手塚治虫の業績を記念した1997年にスタートした。大賞は過去一年間に最も優れた作品として、審査委員会が選出する。
また斬新な表現、 画期的なテーマなど清新な才能を顕彰する新生賞は、『BEASTARS』の著者である板垣巴留氏に贈られる。擬人化された動物たちを主題とした作品が独自の世界観と清新な表現を持っているとされた。
短編賞は『大家さんと僕』 (矢部太郎)に、そして特別賞はマンガ家のちばてつや氏となった。ちばて氏は、『あしたのジョー』、『あした天気になあれ』などで知られるが、長年の業績やマンガ文化への貢献に加えて、18 年ぶりの単行本となる『ひねもすのたり日記』を刊行したのが契機となった。
手塚治虫文化賞は毎年、賞の行方が注目されるマンガ界を代表するアワードだが、今回の『ゴールデンカムイ』の大賞受賞は多くの人に納得がいくものだろう。明治時期末期の北海道をしたアイヌ文化も織り込んだ冒険ストーリーは、連載開始当初より高い評価を受けてきたからだ。
手塚治虫文化賞のノミネートは今回で3回目、さらに2016年にはマンガ大賞でも大賞を受賞している。またテレビアニメ化され、2018年4月から放送開始している。2018年は『ゴールデンカムイ』の当たり年と言ってよさそうだ。
2018年が特別な年になったのは、新生賞を受賞した板垣巴留の『BEASTARS』も同様だ。すでに今年のマンガ大賞の受賞も決定しており、さらに第21回文化庁メディア芸術祭マンガ部門では新人賞に輝いている。
幅広い作品を対象にする主要マンガ賞3つで同時に受賞する快挙だ。擬人化された動物たちの世界が肉食動物と草食動物の二層からなる複雑な社会構造を持ち、さらにそれが各キャラクターに深い個性を与えているのが評価されている。
手塚治虫文化賞がマンガ家・評論家による投票を重ねたうえでの合議制、メディア芸術祭は審査委員会による選考、マンガ大賞はマンガ愛好家による投票・ポイント制と選出方法はそれぞれ大きく異なる。そうした異なった過程にも関わらず、全てで同じ作品が選出されるのは、作品が普遍的な何かを持つ傑作であるためなのかもしれない。
第22回 手塚治虫文化賞(2018年)
マンガ大賞 『ゴールデンカムイ』(野田サトル)
新生賞『BEASTARS』(板垣巴留)
短編賞 『大家さんと僕』(矢部太郎)
特別賞 ちばてつや
第21回 文化庁メディア芸術祭マンガ部門
大賞 『ねぇ、ママ』(池辺葵)
優秀賞『銃座のウルナ』(伊図透)
『ニュクスの角灯』(高浜寛)
『夜の眼は千でございます』(上野顕太郎)
『AIの遺電子』(山田胡瓜)
新人賞『甘木唯子のツノと愛』(久野遥子)
『バクちゃん』(増村十七)
『BEASTARS』(板垣巴留)
マンガ大賞2018
大賞 『BEASTARS』(板垣巴留)