2017年9月17日から28日まで東京・西新宿の東京オペラシティを中心に、第20回文化庁メディア芸術祭受賞作品展が開催される。アニメーション、マンガ、アート、エンターテインメントの4分野を軸に、国内外の最先端の文化の状況を明らかにする。
今回はアニメーション部門大賞の『君の名は。』、エンターテインメント部門大賞『シン・ゴジラ』、優秀賞『Pokémon GO』といった一大ムーブメントを巻き起こした作品が来場者の注目を集めそうだ。一方で、アート部門、アニメーション部門を中心に、海外からの受賞作品が急増している。ジャンルを超えることが特長のメディア芸術祭は、いまや国境をも超えている。
1997年にスタートした文化庁メディア芸術祭は、今年20回目を迎える。しかし「20年」の数字は、単にキリがよい以上に大きな節目となっている。今年のメディア芸術祭は、外見も内容も大きく変化しているからだ。
まず毎年2月に開催されてきた受賞作品展が秋に移動した。会場も従来の六本木・国立新美術館から、NTTインターコミュニケーション・センター(ICC)と東京オペラシティ アートギャラリに変っている。
六本木の主会場は巨大なワンフロワーを利用することで、まさにメディアアートを一望する体感を来場者に与えてきた。そこからはメディアアートの広大さが示されていた。
一方、今回の主会場は高層ビル内の3階層から成り、さらにそれぞれがいくつもに曲がる複雑なスペースとなっている。この中に各作品が、ジャンルを超えて並べられる。次に何が現れるか分からない意外性、現代文化の混沌さが感じられて面白い。
しかし、並べ直すという試みに明確なコンセプトが見え難く、会場のスペースの分断、それがさらに作品展示を小さなブロックに孤立させてしまった印象を受けた。その点がやや残念に感じた。
作品では、エンターテインメント部門の『シン・ゴジラ』が目を惹く。会場には映像だけでなく、デッサンやマケットなどもあり、ファンには見逃せない。
同時に20回のこの年に実写映画が大きく展示される意味は格別だ。長い間、メディア芸術祭は、アニメーションやミュージックビデオ、コマーシャルは取り扱ってきたが、劇場・テレビドラマなどの実写映画は扱っていなかった。新分野のアートとして確立させること目指したメディア芸術に対して、映画やテレビ番組はすでに評価を受けている芸術分野と判断されたためと考えられる。
しかし20年間の取り組みもあり、メディア芸術4分野はすでに社会的な評価を確立している。そうなると逆に近年はアニメーションやエンターテインメントに近しい映画の不在が目立っていた。『シン・ゴジラ』はその壁を打ち破り、メディア芸術の新たな定義づけを迫っているように感じるのだ。
グローバル化もまた、近年、メディア芸術祭を覆う大きなトレンドである。とりわけメディアアート部門とアニメーション部門は、各部門受賞8作品のうち日本からはそれぞれ3作品しか選ばれていない。これは海外からの応募が拡大している反映だ。両分野では国内アワードの選考でありつつも、すでにグローバルな中で評価する状況になっている。
ここでもメディア芸術祭は、スタート当初の作品顕彰を通じた文化振興といったコンセプトから大きな変化を求められている。新たな定義は国内外の最新の芸術を提示し、コミュニケーションすることによる活性化かもしれない。
もちろんこうした変化は決してマイナスではない。むしろ、最も時代の変化に感応しやすいメディア芸術ならではの利点と言っていいだろう。そして20年間、作品を選び、評価し、展示することで世に問うことで、そうした変化を提示してきたことにこそメディア芸術祭の価値がある。
であれば、第20回文化庁メディア芸術祭受賞作品展は見逃すことが出来ない。それは過去と現在の変化を確認し、そしてさらに未来から過去を振り返る時の指標の役割を果たすからだ。
第20回文化庁メディア芸術祭 受賞作品展
http://festival.j-mediaarts.jp/exhibit/
会期 2017年9月16日(土)~9月28日(木)
会場 NTTインターコミュニケーション・センター [ICC]、東京オペラシティ アートギャラリー 他
入場料 無料