2022年3月26日、27日の2日間、東京ビッグサイトにて「AnimeJapan 2022」が開催された。「AnimeJapan」は毎年、アニメ業界の各社が協力して実施する大型イベントである。業界関連企業の出展ブースやステージイベント、物販、展示があり、2019年には14万6000人以上を動員した。さらに国内国外企業が参加する国際ビジネス見本市などがあり、国内最大の総合アニメイベントとして業界に欠かせない存在だ。
しかし2020年初めから世界を覆った新型コロナ禍は、「AnimeJapan」にも影響を与えた。20年は開催中止、21年はオンライン開催とその機能を大幅に削がれてきた。「AnimeJapan 2022」は2019年以来3年ぶりのリアル開催となるアニメファン、そして業界待望のものである。
では3年ぶりのリアル開催の結果はどうだっただろうか。やはり新型コロナの影響は大きかった。イベントの目玉である展示ホールの出展企業・団体数は70数社、これは過去最高で160社を超えていた2019年の半分以下になる。特に中堅規模のアニメ制作会社(アニメスタジオ)やアニメ周辺事業会社、海外企業の減少が顕著だった。
またブースのサイズも例年より規模を抑えた企業が目立った。2年連続のリアル開催中止による損失、さらに22年も中止リスクがあったことを考えれば、多くの企業の慎重姿勢は無理のないところだ。
そのなかでアニプレックスを始めたとしたソニーグループ、東宝が巨大ブースを設けていたのが目を惹いた。バンダイナムコグループ、KADOKAWA、東映アニメーション、Netflixも含めて、アニメーション事業が好調と伝えられる企業の積極姿勢が目立った。一方で業績が厳しいとされたなかでも相当力を入れている企業もあり、「AnimeJapan」を途絶えさせないという決意が伝わってきた。
展示ホールは2019年と同様に東1~8をまでを使用したこともあり、コロナ対策の余裕をもった配置を考えてもデッドスペースが目立っていた。また感染予防からイベント参加を見送ったファンもおり、来場者数も例年より少なかったと見られる。
それでも全体を見れば、「AnimeJapan 2022」は大きな成功だった。ひとつは3つの特設ステージを利用した42にもなるステージイベント「AJステージ」の盛り上がりである。いずれも人気声優、音楽アーティスト、制作スタッフが参加する豪華なもので、会場は多くのファンで埋め尽くされた。
さらにステージの様子はオンライン視聴参加者にライブと期間中アーカイブのかたちで配信された。会場のファン以上にネットの向こう側でイベントを楽しんだファンも多くいたはずだ。オンライン視聴の充実はコロナ禍対策として過去2年間、主催者が蓄えたノウハウが反映されている。同時にコロナ禍を超えて、新たなファンと作り手をつなぐコミュニケーションの手段としてイベントのありかたを進化させている。
オンライン配信の活用は「AJステージ」だけでない。展示ホールの大手企業は、独自のブース内ステージでのイベントを目玉とするものが多かった。こうしたイベントの多くも、ライブ・収録のかたちで配信されていく。であれば各企業ブースは必ずしもぎゅうぎゅう詰めにする必要はない。これ以外にも係員の大声による呼び込みや注意・整理、スタッフによる配りものもなく(多くは自分で手に取って持っていく)、様変わりの風景になった。
また今回驚かされたのは、ブース内撮影をOKとする企業が目立ったことである。これまでは著作権をたてにブース内撮影禁止を掲げるケースが多かった。声優やアーティストが出演するライブステージを別にすれば特に撮影を止められることもなく、なかには積極的に写真のSNS投稿を呼びかける様子も見られた。ブース内の撮影スポットもより大きくなったようにも感じられ、これもSNS映えを意識していそうだった。作品の人気や話題を拡散するうえでますますSNSが重要になっていることに対応しているのだろう。
人によっては今回の「AnimeJapan」を寂しいと感じたかもしれない。しかし余裕のあるスペース、的確な導線の設計、大規模イベントにありがちな殺気だった雰囲気もなく、密を心配する場面はほとんどなかった。むしろ来場者は快適に「AnimeJapan 2022」を楽しめたのでないだろうか。
26日、27日のファン向けのパブリックデイに続き、28日、29日にはビジネスデイ2日間が開催される。こちら依然、海外のアニメ関係者の来日が難しいこともあり、オンライン開催となる。3年連続でのリアル会場がなしと、より厳しい状況だ。それでも2022年のパブリックデイの成功は、23年以降の本格的なイベント再開に期待につなぐに充分なものであった。
AnimeJapan 2022 https://www.anime-japan.jp/