「アニメエキスポ2019」Netflixパネル グローバルアニメ作品が並ぶ

Global Stories: Netflix Anime

 2019年7月8日、ロサンゼルス市内で開催中のAnime Expo 2019にて、Netflixが注目ラインナップを紹介するパネルイベント「Global Stories: Netflix Anime」を開催した。Netflixが今後注力するオリジナルアニメから4タイトル『キャノン・バスターズ』、『Levius -レビウス-』、『Seis Manos』、『Trese』をピックアップした。
 「オリジナルアニメ」としているが、取りあげた作品は日本アニメファンにとっては異色なラインナップである。ポリゴン・ピクチュアズがアニメーション制作する『Levius -レビウス-』以外は全て海外企画で、『Seis Manos』、『Trese』は制作も日本ではない。Netflixが掲げるアニメの多様性を目指した作品だ。

 パネル前半は各作品からゲストが招いたトークと、それぞれの制作の背景や魅力を語るものだ。『キャノンバスター』のエグゼクティブプロデューサー・クリエイター・監督を兼任するラショーン・トーマス氏、『Seis Manos』脚本のAlvaro Rodriguez氏、『Trese』エグゼクティブプロデューサー・監督のJay Oliva氏。そしてポリゴン・ピクチュアズ代表取締役の塩田周三氏の4人である。
 それぞれのキャリアからはじまり、アニメとの出会い、そして「アニメ」とは何か、今後のアニメなど。アニメについて様々な話題があがった。世界のトップクリエイターがいかにアニメに影響を受けたのか、世界に広がるアニメの多様性が語られる興味深いものとなった。

 後半は作品の紹介パート。『Levius -レビウス-』は、今年3月にポリゴン・ピクチュアズが制作する3DCGによるNetflixオリジナルアニメと発表された作品。今回のパネルで唯一の日本作品である。中田春彌のマンガが原作で、人体と機械を融合させて戦う格闘技で戦う少年の物語だ。塩田氏はスチームパンクの世界観やキャラクターの関係性などを見どころに挙げた。
 大きなニュースがあったのが、『キャノン・バスターズ』である。カルトな人気を誇ったカートゥーンアニメーション『ブーンドックス』のラショーン・トーマス氏がプロデュースとクリエティブの中心になり、日本のサテライトがアニメーション制作する。Netflixオリジナルアニメがブランド化された早い段階から言及されてきた作品だが、これが2019年8月15日からいよいよ配信を開始する。

 『Seis Manos』は1970年代のメキシコを舞台に拳法の達人が正義のための戦い挑むというストーリー。テキサス州オースティンに拠点を持つ新興スタジオのパワーハウス・アニメーション(Powerhouse Animation Studios)が制作する。2019年秋配信開始予定だ。
 フィリピンのグラフィックノベルを原作にする『Trese』はかなりの異色作だろう。これまでも企画は発表されていたが、ほとんど詳細が明らかでなかった。今回は美術ボードやキャラクター設定が公開された。フィリピンの神話に登場するクリーチャーが存在するマニラを舞台に、暗黒街と対決するアレクサンドラ・トレスの活躍を描く。アクションファンタジーではあるが、新海誠を引き合いにして美術にこだわったと話していたのが印象的であった。

 日本アニメスタイルを大胆に取り入れたグローバルタイトルを、日本アニメのファンに積極的にアピールするのが今回のパネルの目的であったと思われる。しかしこうした狙いは必ずしもファンには受け入れられなかった。
 イベント最終日の午後とお客の数が少なくなる時間帯ではあったが、大きな会場は空席がかなり目立つ厳しい結果だった。若いファンの姿は見られず、一部のアクション作品のファンが観客となった。
 Netflixの視聴者とアニメファンの嗜好は必ずしも一致しないという指摘はこれまでにもされたことはあった。今回はNetflixが力をいれる日本アニメスタイルの日本以外の海外作品が、少なくとも米国の日本アニメファンからはあまり支持されてないという意外な結果になった。
 Netflixは昨年もAnime Expoで大型パネルを開催しており、2000名規模の会場を満員にしていた。2019年はこれとは対象的な結果になり、「アニメ」を巡る環境やファンの受け止め方が単純でないことを明らかにしたかたちだ。

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