東宝2026年2月期決算を読む 売上利益過去最高、IP・アニメ事業は752億円

ファイナンス決算

 2026年4月14日に東宝が2026年2月期の決算発表をした。2025年の劇場映画の盛り上がりに加え、成長分野のIP・アニメ事業も伸びており、売上高と収益で過去最高を更新する好調な業績を続けている。
 通期連結売上高は3606億6000万円と前年比で15.2%増、営業利益678億8000万円、経常利益701億4000万円、当期純利益517億6000万円はそれぞれ5%、8.8%、19.4%の増加だ。
 『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』、『国宝』、劇場版『チェンソーマン レゼ篇』など配給作品の大型ヒットが、映像事業の伸びを支えた。映像事業の売上げは1826億1000万円(30.6%増)、営業利益は373億円(30.3%ぞ増)と特に大きい。

■IP・アニメ事業752億円、TOHO animation452億円

 当該期より映画事業から分割されたIP・アニメ事業は売上752億6000万円(8.5%増)と演劇事業の3倍以上、不動産事業の791億1000万円とほぼ同じで、早くも主軸となっている。買収した北米配給会社のGKIDS、アニメ制作スタジオのサイエンスSARUが売上面で大きく貢献した。
 ただし利益面では前年比でマイナスになった。営業利益172億900万円は、22.2%と二桁の減益だ。大型買収が続いたことで、逆に買収先企業ののれん償却が増加しているためである。また、第4四半期は新規事業のアプリゲームをリリースしたことで、ゲーム開発の償却も増えた。

 IP・アニメ事業からアニメ事業の「TOHO animation」(サイエンスSARUやGKIDSは含まれない)を切り出すと、売上高は452億5000万円と前年から6.5%の減少だ。
 配信売上が最も大きく237億円(8.5%増)、キャラクターライセンス109億3000万円(2.3%減)が続く。商品物販(35億6000万円56%減)とパッケージ(13億2000万円57.8%減)の下げ幅が大きかった。いずれも前年は『ハイキュー‼』 の貢献が大きかっただけに、反動がでた。

■アニメだけでないIP・アニメ事業の位置づけとは?

 東宝のIP・アニメ事業の特徴は、「アニメ」だけの事業でなく、IPと海外を含んだ二次展開ビジネスと位置付けていることだ。事業領域はTOHO animationやサイエンスSARUに加えて、ライツ/ゴジラ、GKIDSやAnime Limitedなども海外グループ会社も統括するTOHO Globalの3つのグループから構成される。
 IP・アニメ事業では、アニメで成功してきたビジネスモデルを実写作品にも落とし込む。ライセンス展開や海外事業である。つまり映像自体のビジネスを軸とした映像事業、映像から派生するライセンスを軸としたIP・アニメ事業である。ゴジラ関連や海外事業全般がIP・アニメ事業に含まれる理由だ。

■『鬼滅の刃』『国宝』大ヒット後の2027年2月期は?

 26年2月期は大きな伸びとなったが、現在注目されるのは27年2月期である。前期の好業績は興収400億円超の『鬼滅の刃』、200億円超の『国宝』の存在が大きい。27年2月期はこの大型ヒットの部分をどこでカバーが出来るのかが鍵になるが、ハードルが高く、反動減が予想される。東宝自体も連結売上高で3450億円、営業利益620億円と減収減益を予測するなど慎重な見方を取る。

 業績予想が上振れするとなると、今期のラインナップからの新たな大型ヒットの出現だ。好調なスタートを切った『名探偵コナン ハイウェイの堕天使』はあるが、毎年、ヒットが大きいシリーズだけにある程度織り込み済みと見ていいだろう。
 サプライズがあるとすれば、ひとつはキャラクターとして圧倒的な人気を誇るちいかわの初の劇場版『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』であろう。7月24日公開は夏休みの需要を狙っているが、世代を超えた支持があるだけに、大きなヒットを狙いたい。
 もうひとつは『ゴジラ-0.0』である。日本だけでは『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』並みの400億円のハードルは高いが、本作は巨大な海外市場を視野に入れている。北米配給子会社のGKIDS、そして TOHO Globalの采配が鍵となる。東宝が力をいれてきた北米市場の成果が問われる。ゴジラは東宝が原作を保有し、製作費を全額出資するからヒットとなればリターンはかなり大きい。

■2032年、アニメ年間30クールを目標

 東宝の業績と成長は、2027年2月期よりさらに先を長期的に見る必要がある。やはり注目は戦略分野となるIP・アニメ事業である。
 2032年2月期には同事業の営業利益を現在の2倍以上にすると目標を掲げる。その前提のひとつがアニメ製作の大幅増である。決算発表資料によれば、2026年3月期にすでに有力原作のアニメ化権を多数獲得したとしている。2029年3月期には、現在の年12クール(1クールは約12話)から20クールに拡大する見込みだ。さらにその先の2032年には30クールの製作出資を目標とする。

 ただし、懸念もある。製作出資拡大は、事業コストの大幅増加につながる。現在、アニメ製作の予算は一貫して上昇を続けており、今後当初予想を上回る費用の発生の可能性は拭えない。
 同じことが、やはり積極進出を目指しているゲームにも言える。ゲーム開発コストも費用がかなり高く、開発期間も長いため、多くの作品をリリースするのは難しい。それだけに確実にヒットをだしていかなければ、コストセンターとして重荷になりかねない。有力なアニメなどの連動も含めて、タイトル選定の見極めが重要になる。

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