
■日本からのプレゼンテーション、ピッチも増加
2025年6月5日からスタートする今年のアヌシー国際アニメーション映画祭では、日本作品の上映以外でも日本の存在が大きくなっている。ひとつは制作前の作品を紹介するプレゼンテーションやピッチセッションが多いことだ。
現在、公表されているプログラムだけみても、「Tokyo Pitch」、「Japanese Short Animation: New Way, New World」、「Japanese Feature Animations in Progress」、「Japan Animates the Future – Introducing “Indie Anime” Genre and Anticipated Works from Leading Studios」、「From Tradition to Vision: European and Japanese Artists in Residency」、「Toei Animation Presents: “Foxing” and the Vision Behind Eterna Animation」の6つがある。
「Tokyo Pitch」は事前に国内で選抜したアニメーション企画をピッチセッションと国際見本市(MIFA)会場のブースで展開するものだ。各国・地域によるピッチはいまでは数多いが、今年で10年目を迎える東京都のプログラムはアヌシーMIFAではかなり早い時期から実施しているお馴染みの存在だ。今年はキッズ向けからCGアクションまで5作品をアピールする。
「New Way, New World」は文化庁から支援を受ける短編アニメーション作家の新作を海外に展開するプロジェクトの紹介だ。国内の最前線で活躍するアーティストの参加で注目を浴びている。
「Japanese Feature Animations in Progress」や「Introducing “Indie Anime” Genre and Anticipated Works from Leading Studios」、「From Tradition to Vision」は文化庁や経済産業者など公的な機関がサポートするプロジェクトの関連とみられる。関連機関・団体が日本のアニメーション発信の入り口として積極的にアヌシー/MIFAを活用しようとしているのが分かる。
公的な動きが目立つ中で注目されるのが、東映アニメーションによる「”Foxing” and the Vision Behind Eterna Animation」だ。ここでは新作タイトルとそれを押し出す新しいオリジナルアニメブランド「Eterna Animation」を紹介するとしている。上映とはまた違ったかたちで作品と企業のアピールを目指す。
■アニメーションと日本の新たな関係
もうひとつ日本と関連した興味深い動きもある。日本製作・制作ではないが、どこかに日本の要素を取り入れた作品が増えていることだ。
長編オフィシャルコンペティションは日本からのコンペインこそ2作品だが、『Dandelion’s Odyssey』(仏/ベルギー共同製作)の監督は日本人の瀬戸桃子。『Little Amélie or the Character of Rain』(仏)は京都が舞台で、音楽は日本の福原まりが担当した。
このほかテレビ部門コンペティションの『Firsts “Junko Tabei』(チリ/スペイン)は、世界で初めてエベレスト登頂をした女性登山家・田部井淳子のドキュメンタリーである。『Devil May Cry “The First Circle”』(米国)は日本の人気ゲームを原作に韓国スタジオのミーミルがアニメーション制作したNetflix製作の作品だ。
公式上映では香港の長編映画『Another World』は原案が日本から、ブラジルの『My Grandfather is a Nihonjin』は日系人がテーマ。ワーク・イン・プログレスの長編部門には日本占領下のシンガポールを舞台にした『The Violinist』、また同シリーズ部門には日本人寿司職人を主人公にしたバイオレンスアクション『Get Jiro』もある。範囲を広げると、日本と関連がある作品の数はかなり多い。
世界のアニメーション制作では、ますます国境のハードルが低くなり、企画や題材、スタッフが急激にクロスボーダー化している。こうした流れに日本も知らない間に巻きもまれつつあるようだ。