グローバルのファンコミュニティプラットフォームを活用した新しいアニメビジネスが、先頃フランスのアヌシー国際アニメーション映画祭で発表された。6月12日、映画祭の併設国際見本市MIFAにて、KASAGI Laboがプレゼンテーションした取り組みだ。
会場となったインペリアルパレスには、KASAGI LaboのCEOのケンドリック・ウォン氏、同チーフ・プロダクション・オフィサーの和泉將一氏が登壇。そして日本のアニメ業界の重鎮でもあるプロデューサーの丸山正雄氏がゲストに招かれた。
Kasagi Laboは新しいかたちでアニメを生み出すとして立ち上がったアニメ分野のベンチャースタジオで、シンガポールと日本に拠点を持つ。先頃ベンチャーキャピタルなどからの大型資金調達でも注目を浴びたばかりだ。
今回の発表では、ファンコミュティを持つ多言語プラットフォームをハブとして、アニメ人材の支援やライセンシング、流通、マーチャンダイジング、制作をする仕組みを説明した。プロジェクトではオリジナル作品を中心にスタジオやクリエイターを支援するという。プラットフォームは活用することで、アニメ製作の資金調達を実現する。すでにプラットフォームは開発が進んでおり、2024年第4四半期には正式リリースする。
またこの場で、プラットフォームへの参加が内定した5作品も紹介された。日本からはポプラ社から刊行される小説『文学少年と書を喰う少女』のアニメ化プロジェクト、オリジナル企画の『魔法のない世界で生きるということ』が挙がった。
『文学少年と書を喰う少女』は長編劇場アニメ『銀河鉄道の夜』のキャラクターデザイン、作画監督で知られる江口摩吏介氏が監督し、BILBA スタジオがアニメーション制作をする予定だ。『魔法のない世界で生きるということ』は、クリエイター集団Euluca Lab./ユルーカ研究所の企画である。
このほか中国とフランスによる『Ruthless Blade』、イギリスから『THE MIGHTY GRAND PITON』、中国の『THE TOWN』と国際色が豊かだ。“アニメ”としているが企画は日本アニメに限定せず、日本アニメに影響を受けた作品を幅広く取り上げる方向性が分かる。
[参加が内定5作品]
■ 『Ruthless Blade』 (中国/フランス)
原案/アニメ制作: IDEOMOTOR、PAPERPLANE、BILIBILI
監督: BO ZHANG
■ 『THE MIGHTY GRAND PITON』 (イギリス)
原案/アニメ制作: THE LINE studio
監督: WESLEY LOUIS
■ 『文学少年と書を喰う少女』 (日本)
原作: 渡辺仙州(ポプラ社刊)
アニメ制作: BILBA スタジオ
監督: 江口摩吏介
■ 『THE TOWN』 (中国)
原案/アニメ制作: Arc-anime Studio
監督: YIFAN BAO
■ 『魔法のない世界で生きるということ』 (日本)
原案/アニメ制作:秋鷲、ユルーカ研究所
ゲストとして登壇したプロデューサーの丸山正雄氏は1960年代よりアニメ業界で働き、70年代以降はマッドハウス、MAPPA、M2 Studioを創設し、日本を代表するアニメを次々に企画して世に送り出してきた。そうした作品は国境を越えて絶大な人気を博してきた。
丸山氏はそうした経験を背景に、オリジナル性の高い企画のアニメを作りだすことの重要さを強調。Kasagi Laboが国境を越えてそうしたオリジナル企画を生みだす努力をするのならこれを積極的に応援したいと語った。
プラットフォームの稼働はこれからスタートのため、未知数なところも多い。しかし急激にグローバル化するアニメとそのファンを新しいビジネスの仕組みで結びつける。さらにそこからオリジナル企画を生み出すアイディアは斬新だ。今後、大きな注目を浴びそうだ。