
官民ファンド「クールジャパン機構」の累積損失が2023年度末の時点で397億円であることが分かった。国会の要請にもどづく財務省会計検査院の「官民ファンドにおける業務運営の状況に関する会計検査」で明らかになった。
会計検査は国と民間が共同出資する18ファンドを対象としている。クールジャパン機構はそのひとつにあたり、日本の生活文化の特色を活かした事業の海外展開を掲げている。経済産業省所轄で株式会社海外需要開拓支援機構が運営する。
クールジャパン機構は最終年度にあたる2033年の累積損益額を10億円と想定しているが、会計検査院はこれが資本コストの額にあたる150億円を大幅に下回ると指摘する。このため計画にもとづいた累積損失の解消とともに産業投資資本コストを上回る収益の確保に向け経営の改善に努めることを求めた。
ファンドは開始以来、11期連続で損失を計上し、2023年度末では累積397億円の損失となっている。クールジャパン機構ではこれまでに投資計画と実績にかい離があるとして、数値目標を下方修正した経緯がある。現実的な達成目標と会計検査院の要請の実現とのバランスが今後問われそうだ。
クールジャパン機構は2013年に設立された。官民ファンドではあるが出資金1343億円のうち政府出資の割合が92% 1236億円と大きい。
2023年度末までに直接間接合わせて54件、1241億4400万円を支援した。このうち17件がすでに支援終了(EXIT)した。このEXIT案件についても支援額261億円に対して回収額が156億円と104億円のマイナスとなっている。
これまでの主要な支援事業には海外向けアニメ配信のアニメコンソーシアムジャパン、北米のアニメライセンス会社Sentai、海外向けコンテンツローカル事業のSDI 、海外放送事業WAKUWAKU JAPAN、Tokyo Otaku Mode、KADOKAWA Contents Academy、Zeppホールネットワーク、ジャパンコンテンツファクトリーといったコンテンツ・メディア関連も少なくない。
しかし2025年4月の段階で生活関連が33%、インバウンドが18%、食が12%、コンテンツ・メディア関連は3割程度になっている。より大きな投資はアパレルなどの生活用品や観光、日本食といった分野に向けられている。