IT大手のサイバーエージェントが、『刀剣乱舞』などで人気のエンタテインメント会社ニトロプラスを子会社する。2024年6月26日、両社から発表があった。
サイバーエージェントは、ニトロプラスの既存の個人株主4名から発行済の株式の72.5%相当にあたる140株を166億8300万円で取得し、連結子会社する。買収後も代表取締役の小坂孝志(小坂崇氣)氏が引き続き社長を務めるなど、現経営体制を引き継ぐ。一方でサイバーエージェントは、ニトロプラスのビジネス強化やコンテンツ制作、事業拡大のための運営を支援する。
サイバーエージェントは、1998年に現代表取締役の藤田晋氏が創業、インターネット広告で急成長した。インターネット関連を中心に多方面に進出しており、ゲームや動画配信のAbemaなどの成功で成長を続けている。直近の年間売上高は約7200億円と日本を代表するIT企業のひとつだ。
引き続き事業の高い成長を目指しているが、その手段として買収戦略も積極的だ。2022年には映像制作のBABEL LABEL、2023年には2.5次元ステージのネルケプラニングの子会社化でも注目を浴びた。とりわけ新しい成長の柱として映像・アニメ・キャラクターなどメディアミックス、コンテンツ分野に狙いを定めている。数々のヒット作を世に送り出す今回のニトロプラスの子会社化でも、そうした方針が反映されているはずだ。
一方のニトロプラスは社長の小坂崇氣氏が中心に現副社長でクリエイターの虚淵玄氏らと共に、1999年にゲーム開発のブランドとして立ち上げ、2000年に法人化した。以来、数々のオリジナル作品を生み出している。
ニトロプラスの強みは、コアなゲームファン、アニメファンを惹きつけるマニア性を追求した作品群である。こうした作品はファンから高いロイヤリティを生み出し長く愛されてきた。さらに時にはマニアな領域を超えた大ヒットになることもある。ニトロプラスの代表作である『刀剣乱舞』や『STEINS;GATE』、同社所属の虚淵玄氏が脚本を務める『魔法少女まどか☆マギカ』などである。
ファン目線が強い一方で、安定した経営も特徴だ。これまで生み出してきた作品のほとんどが黒字だとしている。直近3年間の売上高は2021年8月期が35億8800万円、22年が38億9500万円、23年が39億3100万円。いずれも大幅黒字で、23年は営業利益12億9100万円、当期純利益は6億2300万円だった。
売上40億円、グループ従業員90名弱で会社の取得価額167億円、会社全体の評価額230億円はかなり高い。しかしクリエイティブの質の高さと安定経営から、優良企業との判断があったとみていいだろう。
こうした思い切った投資が出来るのは、ベンチャー企業から大企業に育った背景があるサイバーエージェントならと言える。そしてニトロプラスの持つ資産は、グループとのシナジー効果も生み出すはずだ。