1960年より60年以上にわたり東京・銀座に拠点を構えてきた東映が、本社移転を発表した。2024年5月15日に本社ビルが置かれている東映会館の再開発を決議、合せて本社を東京都中央区京橋2丁目の京橋エドグラン内に移転するとした。
東映会館は1960 年に竣工、東映本社として60 年以上の間オフィスとして使用されてきた。また丸の内TOEI 1と丸の内TOEI 2のふたつの直営映画館や試写室なども置かれていた。
しかし築60年を超えるなかで、建物や設備の老朽化が目立っていた。継続使用した場合は、今後は修繕費用や改修費が相当見込まれる状況だった。こうしたことから再開発のうえ有効活用をすることとした。
本社移転は2025年を予定し、その後は25年から29 年までの再開発を見込む。開発後はホテルや店舗を中心とした商業ビルになる。新本社を収容しないのは、東映会館が銀座三越や有楽町マリオン、さらにブランドショップなどの多い繁華街に位置するためとみられる。商業ビルとすることで大きな収益が見込める。
新本社となる京橋エドグランは、2016年に開業した32階建てのビルで、再開発が急激に進む八重洲、京橋に隣接、さらに日本橋、丸の内のビジネスエリアにつながる。ビジネスの利便性が高い。
再開発に合わせた丸の内東映、丸の内東映パラス時代から続く丸の内TOEIの閉館に、映画ファンには残念な気持ちになりそうだ。座席数も大きな東映の旗艦館は、多くの映画史を築いた場所である。
ふたつの劇場は2025年夏を目途に営業終了し、新しいビルに戻ることなく、また移転もしない。座席の大きな映画館でなく、いくつものスクリーンを効率的に回すシネコン時代とマッチしないとの判断があるだろう。
銀座・有楽町地区では、2018年に500席から900席超の3つの劇場を持つTOHOシネマズ日劇が営業終了、2019年には有楽町スバル座が閉館した。歴史のある映画館は次第に姿を消しつつある。
一方で近隣の日比谷地区では日比谷映画、みゆき座、芸術座の跡地に誕生した13スクリーンのTOHOシネマズ日比谷が人気だ。TOHOシネマズシャンテと合せて同地区で15スクリーンを運営する。銀座・有楽町・日比谷の映画館の中心は、山手線の外側から内側に移動しそうだ。